香港の学生による民主化要求運動は長期化の様相を呈している。行政長官の梁振英は硬軟両面で事態の収拾を図ったが失敗に終わった。香港政庁側と学生代表の対話が予定されていたが、直前になって見送られた。
多くの識者は、当事者による対話が問題解決の糸口になると期待していた。しかし、対話は無意味ではないが、それは解のない方程式を解いているようなものである。
香港の立法会議員、リッター・ファン(範徐麗泰)は、「学生の要求に応じて行政長官が辞任すれば、今後、学生デモが起きるたびに行政長官が辞任しなければならない。香港の政治は不安定化のスパイラルに陥る恐れがある」と危惧する。全国人民代表大会の代表を務めるファン議員の危惧は理解できるが、香港政庁と学生との対話ができていないのはやはり問題である。
では、行政長官と香港政庁としては一体何ができるのだろうか。例えば選挙制度を変えることは香港行政長官の権限では不可能だ。かといって、行政長官が学生と同じ立場に立って北京と対決すれば、明日の香港はどうなってしまうのか。
おそらく真に対話すべきなのは、香港の行政長官と学生ではない。全人代の委員長と香港の学生ではないだろうか。全人代の代表は、なぜあのような選挙制度を決定したのか。それを香港人に納得のいくように説明すべきである。
さもなければ、事態はますます長期化し悪化していくと思われる。そうした事態を考えるだけでもぞっとする。北京は人民解放軍、武装警察と秘密警察を香港に派遣し、香港のマフィアも動かして、民主派の議員と学生の運動を力で抑え込む。どれだけの犠牲者が出るかは予測できないが、香港は香港でなくなってしまうに違いない。