仁川は、韓国の首都ソウルに最も近い港湾のある都市である。その仁川で、先月からスポーツの祭典、アジア大会が開かれている。

 韓国において、ソウル(1986)、釜山(2002)に続く3回目の開催である。

国威を発揚してきたスポーツイベント

アジア大会が韓国・仁川で開幕

仁川アジア大会の開会式〔AFPBB News

 1986年のソウル・アジア大会は、高度経済成長を続ける韓国が初めて開催する大規模なスポーツイベントだった。

 その2年後に控えている88年のソウル・オリンピックもあり、韓国は2つの大規模なスポーツ・イベントを成功させるため韓国全体が湧き上がっていた。

 これらのスポーツイベントを誘致した頃の韓国は軍部独裁政権で、大学生や知識人層のデモが連日繰り返されており、それらを鎮め愚民化政策を推し進める政府にとっては格好の材料でもあった。

 1986年は、まさに民主化闘争が大規模なスポーツイベントにかき消され、政府の愚民化政策は成功した。

 こういった残念な背景もあるが、とにかくソウルアジア大会は成功裏に終わり、2002年には韓国の第2の都市である釜山でアジア大会が開かれた。2002年と言えば、日韓W杯も開催され、またもや韓国は2大スポーツイベントで盛り上がりを見せ、これも成功裏に幕を閉じた。

 2匹目のドジョウは成功し、3匹目のドジョウを狙う仁川アジア大会。だが、現実はそれほど甘くなかった。

 世の中は、冬季オリンピック誘致に必死になっていた。すでに2回も開催したアジア大会より、一度も開催していない冬季オリンピックを誘致したいと政府は考えていたのだ。