今から2年先の世界は、一部に「2012年問題」として取り沙汰する者があるように、秩序の一大変動期を潜り抜ける(といってもこの年「マヤの暦」が終わり、世界が終末を迎えるといった類の“ニューエイジ譚”ではない)。
選挙、選挙の「惑星直列」
2012年、米国とロシアで、大統領選挙がある。中国共産党は、第18次全国代表大会(18大)を開き、指導層を入れ替える。世界第2の強国となって後、中国が初めて迎える権力継承となる。
この3つが揃うだけで、既に惑星直列的なインパクトがある。
そこへ持ってきて、フランスにも大統領選挙がある。誰を選ぶかは、欧州統合の将来や大西洋関係に小さくない影響を持つこととなろう。
日本の近隣、東アジアはもっとすさまじい。韓国で大統領選挙、台湾で総統選挙がそれぞれある。政治の季節はさぞかし暑くなるだろう。香港は、議会の選挙を予定している。
各国で異なる選挙周期の倍数がこれだけ揃い、選挙、選挙、また選挙となる2012年は、まさしく「世紀の」エレクション・イヤーだ。
ことに東アジアの各選挙は、中国における権力の移行を磁力源としつつ、互いに影響し合うプロセスとなるだろう。ここでのワイルド・カードは、もちろん北朝鮮である。
中国は、今年5月北京を訪れた金正日に対し、以後平壌の内政過程へおおっぴらに介入していくことを承諾させた。18大開催をメドに、何らか変化を起こそうとする腹かもしれない。つまり今後の2年で、北朝鮮に大きな変動があって不思議ではない。
戦後、いや近代神話の後退
しかも一昨年(2008年)から去年までの短い期間に、いくつかの戦後神話が音を立てて崩れるか、有効性を大きく失った。
結果は、世界勢力地図自体に起きつつある、歴史に稀な書き換えだ。いやがうえにも不安を持つのは、日本を含む既成秩序の陣営にいた者、追いつかれた側である。