木材で最先端の航空機や自動車を作り出す

結晶性ナノファイバーからできた3次元多孔性高分子複合材料

2014.09.25(木) 矢野 浩之
    http://goo.gl/PlVLt8
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凄い材料が世の中にある。結晶性のナノ繊維で補強され、3次元的に構造制御された多孔性の高分子材料。

 米国の化学会でこの材料の化学的構造制御について紹介すると言ったら、立ち見が出るほど人が集まった。同じ内容を、その前の機会では、“木材の化学修飾”というタイトルで話した時には全く人が集まらなかったのに・・・。米国の著名な木材研究者から聞いた笑い話である。

身近すぎて見過ごされていた「高性能素材」

 何億年も前から地球上に存在する木材は、古くから人類の生活に溶け込み、あまりに身近すぎて、その高性能素材としてのポテンシャルを考えることがなかった。

 改めて今風に木材の構造を眺めてみると、鋼鉄の5分の1の軽さで鋼鉄の5倍以上の強度を持つ結晶性ナノファイバーからできた3次元多孔性高分子複合材料、という先端素材の匂いがプンプンする素材となる。

 製造過程で二酸化炭素を固定し、廃棄にあたっては地球環境下での分解性をコントロールできる。しかも、その生産に要するエネルギーは、金属やプラスチック、セラミックスと比べ圧倒的に少ない。そのため価格も安い。

 近年、木材から、その結晶性ナノファイバーを取り出し、材料として使おうという取り組みが世界中で活発化している。セルロースナノファイバーの製造、機能化、構造・複合化に関する研究開発である。これについては、すでにこのシリーズで紹介した(過去2回の記事はこちらから)。

 今回は、図1に示す木材の階層的構造から、このセルロースナノファイバー材料の将来像を想像してみたい。

図1:木材の構造は、セルロースナノファイバーが鉄筋で、リグニンが鉄筋と鉄筋の間を埋めるコンクリートの役割を果たしているように見える。木材の約50%をセルロースナノファイバーが占めている(図表提供:筆者、以下同)
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矢野 浩之 Hiroyuki Yano

京都大学 生存圏研究所 生物機能材料分野 教授、農学博士

 

長野県松本市出身。1982年3月、京都大学農学部林産工学科を卒業。84年、同大学大学院農学研究科修士課程林産工学専攻を修了。

 

1989年に論文により農学博士を取得。86年から京都府立大学農学部助手、92年から同大学講師を務める。98年に京都大学木質科学研究所助教授に就任。2002年に秋田県立大学木材高度加工研究所客員助教授。2004年より京都大学生存圏研究所教授。主にバイオ系ナノ材料の研究・開発に力を注ぐ。2000年から植物の基本骨格物質となるセルロースナノファイバーを用いた材料開発を進める。

 

同素材は、鋼鉄の5倍以上の強度を誇る太さ4-20ナノメートルのバイオナノファイバーであり、IT機器や自動車、医療機器など幅広い分野で実用化に向けた研究・開発が進められている。

 

日本木材学会や日本材料学会、セルロース学会などに所属。ナノセルロースフォーラム会長。1989年に日本木材学会奨励賞、2005年にセルロース学会林治助賞、2009年に日本木材学会賞を受賞している。

エネルギー戦略

20世紀の社会を築き、支えてきた石油。しかし世界的な環境意識の高まりの中で、石油依存社会の限界が明らかになりつつある。石油はいまどうなっているのか。石油社会の次を築き、新世紀を切り開くイノベーションは何か。その最先端の姿をリポートする。

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