昨秋以降、中国人訪日客の激増が続いている。8月は25.4万人*と前年比56%増加し、昨年9月以降12カ月連続で各月の過去最高を更新中である。
* 本文中の訪日外国客数に関するデータはすべて日本政府観光局発表の推計値または暫定値。
中国人訪日客は前年比倍増ペースで激増中
昨年日本を訪問した中国人旅行者は年間合計で131万人だった。ところが、今年は年初から8月までの累計で154万人(前年比84%増)に達し、すでに昨年の1年分を上回った。このままのペースで増加すれば通年で240万人に達する勢いである。
今年の1~8月累計の全世界からの訪日外国客数は864万人、前年に比べ26%増加した。その増加への寄与率を国別にみると、中国が40%、台湾が25%を占めており、とくに中国人訪日客増加のもたらすインパクトの大きさは群を抜いている。
昨年の訪日外国客数は年間合計1036万人と初めて1000万人を上回った。国別順位では、1位が韓国の246万人、2位が台湾の221万人、3位が中国で131万人だった。これら上位3国の合計は全訪日外国客数の約6割を占めている。
今年は8月までの年初来累計では韓国が微減、台湾が3割増である。この伸び率が続くと、通年では台湾が287万人、韓国が245万人、中国が242万人となり、1988年以降昨年までの26年間、ずっと首位の座を占めてきた韓国が2位に転落しそうである。
先行きを展望すると、韓国と台湾はすでに国民の平均所得水準が高く、安定成長期に入っていることから所得増大の速度は緩やかであり、日本滞在ビザも免除されている。このため、今後、両国・地域から日本への観光客が、中長期的に大幅な増加を続ける可能性は高くないと見るべきであろう。
これに対して、中国は少なくとも2020年頃までは経済の高度成長が続くと見られることから、今後数年間は所得水準の急速な上昇が持続すると見込まれる。しかも、日本への観光旅行を楽しむことができるようになる所得水準の階層が急増する。
加えて現時点では中国人旅行者に対して日本滞在ビザが免除されていないため、今後ビザが免除されると、増勢に一段と拍車がかかる可能性が高い。ちなみに昨年7月以降、日本滞在ビザが免除されたタイとマレーシアについては、本年1~8月累計の訪日客数がいずれも50%を上回る高い伸びを示している。
以上の点を考慮すれば、中国人訪日客急増は一過性のものではなく、今後中長期的に大幅な増加が続く可能性が十分あると見るべきであろう。