クレディ・スイス銀行の調査「グローバル・ウェルス・レポート(2013年)」によれば、中国で純資産額5000万ドル以上の個人は5831人いるという。これはアメリカの4万5650人に次ぐ世界第2位の人数である。また純資産額100万ドル超のミリオネアの数は112万人で、こちらは世界第6位につけている。たった数年で巨万の富を得た中国の富裕層が目を向けるのが、地球規模の不動産投資だ。
中国ではほとんどの都市で不動産が供給過剰となり、マンションは空室が急増している。不動産投資はもはやうまみのあるマネーゲームとは言えなくなった。中国の不動産市場を貪りつくした投資家たちが、今度は海外不動産に狙いを定めているというわけだ。資産を海外に移転させたり、自ら海外に移住する富裕層も多い。中国の将来を悲観し、中国での資産をできるだけ縮小させようとしているのだ。
中国人の国境を越えた不動産投資に火がついたのは、世界金融危機がきっかけだった。2008年以降、世界金融危機で壊滅的打撃を受けた欧米の不動産市場にチャイナマネーが一気になだれ込んだ。欧米社会もこれを市場の「救世主」として歓迎した。
だが、わずか数年でその歓迎ムードは薄れてきた。とどまるところを知らない中国資本の流入を危険視する声が高まっているのだ。
外国人投資の積極的な受け入れが裏目に
最近、世界各国で住宅価格の高騰が報じられている。カナダのバンクーバーで、オーストラリアのシドニーで、さらにはイギリスのロンドンで、「住宅が高すぎて手が出ない」という悲鳴が聞こえる。
アメリカのコンサルティング会社、デモグラフィア社は、住宅購入の値ごろ感について調査を行っている。同社は2013年の報告書(Demographia International Housing Affordability Survey)の中で、「住宅に手が届かない都市」のワーストランキングを発表した。トップは香港、次いで2位がバンクーバー、3位がサンフランシスコ、4位がシドニーだった。共通するのは、中国大陸からの移民が多い都市だということだ。