今日のテーマは「しわ取り」。といっても、美容の話ではなく、電気の話だ。「しわ取り」というのは、電力会社の業界用語でもある。

 太陽光や風力の電気は、お天気によって発電量が多くなったり少なくなったりする。それを見ながら、他の電源の電気を増減させて、全体の発電量を安定させるために調整する作業を、「しわ取り」と言うのだそうだ。とても分かり易い。

「推進派」と「懐疑派」のすれ違う主張

 ドイツでは、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の開発に関しては、もちろん、誰も異存はない。ただ、再エネ電気をどの程度、全体の電気に混ぜることができるかという問題になると、賛否両論だ。

 再エネ推進派は、「いずれ再エネだけで、ほとんどの電力需要を賄うことができる」と言う。再エネ推進派は、たいてい強硬な反原発派でもあるので、再エネ電気をどんどん増やし、なるべく早く原発から決別し、できれば空気を汚す火力発電所もなくして、クリーンな国になりましょうというわけだ。

 一方、もう一つのグループ、いわゆる再エネ懐疑派は、「再エネが30%も入ると、ドイツは安定した電力供給を保証できなくなり、コストも急増し、産業国としての大きなハンディを負う」と主張する。

 お金さえかければ再エネ電気を際限なく増やすことは可能だが、太陽光・風力は、発電施設をいくら増やしても、お天気によっては、発電量が突然ほぼゼロになってしまう可能性さえある。このような不安定な電源に多くを託しては、まずいことになる。そもそも、しわ取りの問題はどうするの? というのが、彼らの疑問だ。

 ところが、再エネ推進派は、お天気が悪くて発電がゼロになった時の話を絶対にしない。だから当然、それに対する解決策も一切出さない。いつも、「電気は余っている」の一点張りだ。

 確かに、お天気の良い日は電気は余っていることが多いので、それは嘘ではない。しかし、再エネ懐疑派は、お天気の悪い日のことを心配しているのだから、はっきり言って、この議論は全く噛み合わない。というか、議論にさえならない。