(米「パシフィックフォーラム CSIS」ニュースレター、2014年38号)

By James Manicom

 5月初頭、中国海洋石油総公司(CNOOC)がベトナム沖120海里のところまで中国の最新式油井掘削装置を移動させたことに東アジアは非常に驚いた。

 伝えられるところによると、多数の中国沿岸警備艇および軍艦(ある筋によるとだが)によって保護されながらの移動は、ベトナムの不意をつくものだった。ベトナムは中国船と対峙するためただちに沿岸警備艇を派遣したが、掘削装置周辺立ち入り禁止区域3海里内で何回か中国船と衝突することになった。

 ベトナムは軍事同盟国を持たないことや、ASEANの不統一、中国と比べて海軍力が弱いことなどから対抗策の選択肢は限られている。しかし、排他的経済水域における中国の一方的な掘削行為を容認することはできない。

 中国を孤立させるための外交活動に加えて、ベトナム政府は中国の動きに対してベトナム国内でCNOOCを提訴すべきである。

何が起きたのか?

 5月2日、CNOOCは石油探索リグHD-981をベトナムの海域に搬入した。このリグは7隻の軍艦を含む80隻の中国船に守られており、指揮しているのは中国の指導者以外には考えられない状況である。

 一方、ベトナム側は、CNOOCによる掘削を遅らせるか、妨害するか、または中国側の掘削継続の費用を増加させる目的で29隻の船舶を問題の地点に派遣した。しかし、これらの船舶同士による衝突──排他的経済水域から相手を追い出す際の標準的な手段である──は多大な被害を招くことになった。