市場調査会社の米IDCがまとめた世界のIT市場に関する調査リポートによると、今年1年間における、ハードウエア、ソフトウエア、ITサービス、通信サービスへの支出額合計は3兆7000億ドルとなる見通し。その前年比伸び率は、為替の影響を除いた実質ベースで 4.1%となり、同社の事前予測値である4.6%や、前年実績の4.5%を下回る見込みだ。

モバイルは成長鈍化、IT市場の弱点に

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スマートフォンとタブレット端末の減速が、IT市場全体の成長を抑制すると見られている〔AFPBB News

 同社がその理由として挙げているのが、「新興国市場」と「モバイル機器市場」。

 前者の「新興国市場」については、ウクライナ危機や中国の景気低迷といったマクロ経済の不確実要素を背景に、不透明感が企業の景況感や投資に影響を及ぼしているとIDCは指摘する。

 これによりロシアのIT支出額は今年、前年比1%減少する見通しで、その影響はほかの中・東欧地域にも及ぶという。

 また中国市場も不確実な要素が残るとIDCは見ている。同国市場は昨年低迷したため累積需要が大きく、今年はその反動で支出が10%増に回復する可能性がある。一方で同国の国内総生産(GDP)成長率が7%未満にとどまるとの見方もあり、企業の設備投資が先延ばしになる可能性もあるという。

 後者の「モバイル機器市場」ついては、スマートフォンとタブレット端末の減速が、IT市場全体の成長を抑制するという。スマートフォンは価格の下落や高い普及率を背景に伸び率が低下している。またタブレット端末の出荷台数は過去数四半期連続して予測値を下回っている。これらは今年のIT市場の弱点とIDCは指摘している。

 これに先立ちIDCが公表していた今年のスマートフォン年間出荷台数予測は、前年比19.3%増の約12億台で、39.2%増と高い伸びで推移した昨年に比べて鈍化する見通し。