ニッケイ新聞 2014年5月10日

 国際サッカー連盟(FIFA)のジェローム・バルク事務局長がワールドカップ観戦のためにブラジルを訪問するサポーターに対し、「ブラジルはドイツとは違う」と警告を発した。

 9日付のロイター紙に掲載されたというインタビューの一言だが、バルク氏の発言は、ブラジルの国土の大きさやブラジルの組織化・運営能力など、もろもろのものを指しての表現と言える。

 バルク氏は2006年にW杯が開催されたドイツとブラジルを比較し、次のようにコメントした。「ブラジルは冬だから海岸で眠るわけにはいかない。宿泊場所はきちんと確保しておくべきだ。(ブラジルでは)リュックサック一つでやって来て即座に歩き出すなんて事はどだい無理だ。列車もないし、開催地から開催地へと車で移動する事も出来ない。どこにでも簡単に行けたドイツと同じだと思って来たらとんでもない事になる。ドイツなら車の中ででも眠れるが、ブラジルではそんな事は出来ない」と手厳しい。

 バルク氏は6日にも、「ここ数年間はブラジル政府との関係で地獄のような日々を過ごしてきた」と発言し、伯国政府の管理運営能力のなさへの苦言を呈していた。ブラジルは既に選手団や当局関係者、報道関係者への移動手段確保が困難である事を露呈しており、バルク氏はブラジルの現状は、自国チーム応援のために来伯する観戦者には特に大変な問題となると心配している。

 「(ブラジル側の諸準備の遅れで)最も大変なのは観戦者だ。最大の迷惑を被るのは報道関係者や選手団、当局者ではなく、観戦者なんだ。こんな事をいえば色々な問題も引き起こしかねないが、観戦のためにブラジルに行く人々へのメッセージは、ブラジルに行くための準備が出来ているか否かをよく確認するようにという事だけだ」という。

 FIFAは当初、10カ所での開催を考えていたが、ブラジル全土で開催すべきと主張して、12会場にさせたのはルーラ前大統領だった。また、32カ国を四つのグループに分け、一定の区域の中のみで試合を行う事も考えたが、それもブラジル側の要請で計画倒れに終わった。

 ブラジル側は他の31カ国のチームや観戦者に途方もない距離を移動する事を強いるという事には考慮せず、自国チームが一地域だけで試合したのでは国民が納得しないと主張したというのだ。

 「我々が様々な問題を指摘したのは2009年だった。自分達で決めた事だから、それからの5年間でインフラを整備して、自分達の要求ゆえに生じる問題を解決する事が出来ると期待していたのだが…」と語るバルク氏の顔には、沈痛ささえ漂っていた。(9日付G1サイトなどより)

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