中国とベトナムをめぐる南シナ海の状況が緊迫している――。5月3日、中越間での領土帰属問題がある南シナ海の西沙諸島近海において、中国海洋石油が大規模な石油掘削を発表したのが事の発端である。
両国とも、掘削予定エリアは、それぞれの排他的経済水域にあたるとしてお互いを批判。その後、ベトナムと中国の船舶が衝突する事態に発展した。
南シナ海に眠る巨大な資源
同地域がセンシティブなのは資源埋蔵量が巨大と言われているためだ。報道によれば、中国海洋石油は、石油が世界最大級の産油国サウジアラビアの埋蔵量のほぼ半分に相当する1250億バレル、天然ガスも500兆立方フィートと試算している。
石油はベトナムにとっても重要な資金源で、国有石油会社ペトロベトナムは国の歳入の3分の1近くを担う。
これまで、南シナ海の領土をめぐる小競り合いは中越間で何度もあった。しかし、ベトナムは中国共産党との関係を考慮し、中国の動きを牽制しつつも表面上は友好関係を保ってきた。
ただし、今回は資源が絡んでいるため、ベトナム政府は公式に中国を批判、反中国デモも容認する構えを取っている。
しかし、南シナ海問題でベトナム政府が中国との対立を単純に先鋭化させる可能性は、現実的にはほとんどないだろうと推測する。同じく中国との領土問題を抱えるASEAN各国プラス日米と共同で、中国にプレッシャーをかけるというのが、ベトナム政府が取りうる唯一の現実的な対抗手段だろう。
こうしたベトナム政府の考え方を理解するために、ベトナムにとっての中国関係をもう少し掘り下げてみたい。