韓国ではよく「~女」という呼称が見られる。しかし、これはいい女のたとえではなく、どちらかというと悪いイメージの女性を指す場合が多い。2000年代の初め頃に使われ始めた「テンジャン(味噌)女」から始まり、「キムチ女」、最近は「カンジャン(醤油)女」まで登場した。

 こう並べてみると、なぜか発酵食品名にちなんでいるのが面白い。だが、それぞれ発想は別のところにある。

悪態をつくのは「テンジャン女」

 まず、最初に使われた「テンジャン女」は、一般に悪態をつくときに使う言葉「ジェンジャン」をもじってその音に最も近い「テンジャン」を使っている。

 「テンジャン女」とは、朝はスタバでコーヒーをテイクアウトし、ニューヨーカー気取りでブランチなどを食べる女たちを指していた。

 つまり、見た目は全く韓国人顔なのに、西洋人の真似をして虚栄心を満たしている女子たちに向けて使っていた言葉である。またはブランド品で身を飾る頭の悪い女という意味もある。

 次の「キムチ女」は、見栄っ張りで虚栄心の塊なのは「テンジャン女」と全く同じ流れだが、その範囲が明らかに違う。

 「テンジャン女」は一部の女性たちを卑下して使う言葉だったが、「キムチ女」は韓国の女性一般を指し、卑下する言葉へと発展していった。「キムチ女」同様に「キムチ男」という部類もいる。

 キムチは韓国人の食卓に欠かせない発酵食品である。つまりキムチをこよなく愛する韓国人はキムチを韓国人そのものにたとえて、それに女、または男をつけて、自ら卑下する言葉として使用している。

 具体的に「キムチ女」とは、自分のことを棚に上げて、男に高望みしたり、自分の力ではなく男性に寄りかかって生きる女性という意味である。

 もっとも、この「キムチ女」という言葉がもっぱら使われてきたのは、ネットの世界だった。街中では「キムチ女」などと声に出しては言わないし、テレビやラジオなどの放送では、そのような言葉を使うのはもってのほかという暗黙の了解があった。