経済学の専門家でも中国経済の行方がますます分からなくなっているようだ。
世界銀行のチーフエコノミストだった林毅夫北京大学教授(経済学)は2012年に「中国経済は向こう20年間、年平均8%の成長を続けることができる」との楽観的な見通しを示した。林教授の論理は、中国は新興国としての比較優位を生かし経済成長を続けることができるという比較優位仮説だった。分かりやすく言えば、中国はこれまでの成長モデルをこのまま堅持すれば、これまでと同じような高成長を実現できるということである。
しかし中国経済の内実を考察すれば、これまでの比較優位が失われ、逆に明らかな比較劣位に陥っていることが分かる。まず、経済成長と共に人件費が上昇している。また、人民元も切り上がっている。何よりも30年以上続いてきた一人っ子政策により、労働力の供給が需要に追い付かなくなりつつある。すなわち、中国経済は労働制約によって減速を余儀なくされている。
中国国家統計局が発表した2014年第1四半期の実質GDP伸び率は、政府が掲げる7.5%の成長を下回り、7.4%だった。長い間、中国経済は10%ないしそれ以上の成長を続けてきた。政策当局は景気の下振れリスクよりも、速すぎる成長が失速することを心配していた。しかし、今の経済状況は明らかに変わってしまった。政府が何らかの景気対策を講じなければ、景気が大きく落ち込む恐れが出てきた。
弱まる経済成長のエンジン
世界貿易機関(WTO)の発表によれば、2013年、中国の輸出入の貿易総額は初めてアメリカを追い抜いたと言われている。中国は世界一の貿易大国になったということである。
しかし、中国の税関によると、2014年3月、中国の対外輸出は前年同期を下回り、マイナス成長だったという。林毅夫教授の仮説では、中国経済は自らの比較優位を生かし輸出を増やせば、8%ないしそれ以上の成長を実現することができるということだった。しかし、中国の輸出の伸び率は明らかに鈍くなっている。
否、鈍くなったのは輸出だけではない。経済成長率を計算するときに使われるのは「輸出-輸入」、すなわち純輸出である。中国の純輸出のGDP比は2007年の8.8%から2013年の2.8%に縮小した。このことは、中国の貿易総額の規模は拡大しているが外需の牽引力が次第に弱くなっていることを意味する。