週刊NY生活 2014年4月12日485号

 ケンブリッジのセントラルスクエア駅前、ボストン屈指の激戦地に5月5日、全米第5号店を開ける。ニューヨーク市内の4店は路面展開だが今回は大型スーパーHマートのフードコート内。「本当の日本食を提供したい」と、ゴーゴーカレー大ファンの同スーパーCFOたっての願いで実現した。

大森智子さん

 松井秀喜選手の背番号55にちなんだ石川県発のカレーチェーン「ゴーゴーカレー」(本社東京都新宿区、宮森宏和社長)、その米国支社CEOが大森智子さん。8番街38丁目の米国第1号店がオープンしたのは2007年。

 2012年、社長就任後3か月という驚異のスピードで2号店をワシントンスクエアそばにオープン、マネージャー不在で赤字だった1号店を翌年には黒字転換、総売り上げも昨年度には2倍増と絶好調だ。

 カレーは日本の国民食。各家庭でおふくろの味があり、給食でも毎週のように登場した。とくに男子の好きなメニューのベスト3には必ずランクインする。大森さんはこの国民食をファストフードとして米国に根づかせたいと、まず本拠地ニューヨークから東西南北4時間以内に支店を広げ、ゆくゆくは全米展開を目指す。

 4時間以内とは大森さんが新人研修や社員教育などで移動できる圏内。「売り上げに応じて人件費や仕入れを考えさせる。スタッフの裁量を伸すことが大切。社員といっしょに成長したい」。

 石川県七尾市出身。父は公務員をしながら相撲連盟の理事を務め、少年時代の輪島や栃乃洋を育てた。

 幼い頃からのど自慢大会に出場したり児童劇教室に通うなど芸能の世界に強い憧れを持ちながらも保守的な家風のもと県下有数の名門、七尾高校に進学。敷かれたレールに反発し、カリフォルニア州モントレー・ペニンシュラ・カレッジ演劇科への留学も勘当覚悟で実行した。

 言葉が通じない米国、「『I can't』と逃げてるなら日本に帰れば」の一言で発奮。英語漬けの生活を徹底し、卒業時には地元劇団の舞台にも主要キャストで出演。ニューヨークの演劇専門学校には外国人初の奨学生として入学した。

 オフブロードウエーを中心に日米を往復しながら女優として充実した日々を送っていた矢先にアパートが火事で全壊、すべてを失いやむなく会社員に転身。知人の紹介でアシスタントとして入社した日系テレビ局でも才能をたちまち開花させ1年後にはスポーツ部のディレクターに。

 結婚退職を経て日系フリーペーパーの営業でらつ腕を振るう。同紙の英字媒体を立ち上げ、リーマンショックで赤字だった業績をここでも黒字に転換させた。ゴーゴーカレーとの縁は1号店オープンの際に広告営業で飛び込んでから。

 趣味は? と聞くと、すぐさま「旦那さん」。結婚9年経ってもメロメロ。2歳上の聡之さんは別に飲食店を経営する。お互い仕事の話はほとんどしないが、ふたりで食べ歩きをするのが何よりも楽しいという。

(加藤麻美記者、写真も)

■企業データ:ゴーゴーカレーUSA, Inc. Go Go Curry USA, Inc. / 会社所在地:273 W. 38th St,New York / 設立年・進出年:2007年 / 従業員:22人 / 事業内容:カレー専門店 /ウェブサイト:www.gogocurryusa-ny.com

■パーソナルデータ:おおもりともこ / 役職名:取締役社長 CEO / 出身地:石川県七尾市 / 入社年:2012年 /

学歴:1991年石川県七尾高校卒業、93年モントレー・ペニンシュラ・カレッジ卒業 /
職歴:女優、98年NHKエンタープライスNY入社、スポーツ部ディレクター、2004年トレンドポット社入社、ディレクター /
家族:夫・聡之さん / 居住地:ロングアイランドシティー / 趣味:食べ歩き、カラオケ / 好きな作家:宮部みゆき、ハーブ・エッカー /好きな言葉:幸せは自分の心が決める / 40歳

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