今週、日本マスコミの関心の多くは軽井沢滞在中の金賢姫・元北朝鮮工作員に注がれた。一方、隣の朝鮮半島では米韓中朝各国が、国家の威信をかけて政治・軍事的示威行動を競い合っていた。このミスマッチは一体何なのだろう。
現地からの報道によれば、結局米空母ジョージ・ワシントン(GW)は7月25日から始まる米韓合同演習中「黄海には入らない」という。これに対し、米国の一部には「中国の圧力に屈した」との厳しい批判もあると聞く。果たして事実は本当にそうなのか。
東アジアにおける米中両海軍のせめぎ合いについては、このコラムで過去2回続けて書かせてもらった。
今回はその締めくくりとして、迷走した米韓合同演習を総括するとともに、その原因を作った中国人民解放軍の政治力についても検証してみたい。
巻き返しを始めた米韓
ヒラリー・クリントン国務長官とロバート・ゲーツ国防長官が韓国入りする前日、ロバート・ウィラード米太平洋軍司令官、ジェフ・モレル国防総省報道官らがソウルで記者会見を行い、迷走を続けた米韓合同演習につき公式説明を行っている。
特に、ウィラード司令官の発言は興味深い。全文は国防総省サイトに掲載されているが、日本ではあまり詳しく報じられていないようなので、ここに同司令官の発言を掻い摘んでご紹介しよう。
●今後数カ月間にわたり、西海(黄海)と東海(日本海)において一連の米韓合同演習を実施する。
●その第1段階は7月25日から数日間東海で実施され、米第7艦隊から空母GWを含む多数の艦船が、韓国海軍からもP-3C対潜哨戒機及び多数の艦船が参加する。
●韓国空軍から第7空軍の多数の飛行隊が、また米側からは空母GWの艦載機に加えて4機のF-22ラプターが参加し、全体では100機以上の航空機が参加する。
●同演習では空母からの離発着訓練、防空訓練、攻撃訓練、航空示威訓練、艦船による海域通過訓練などが予定されており、一部はメディアに公開される。
●(中国側の反応につき問われて)懸念していない。本合同演習の目的は北朝鮮に対する「show-of-force(戦力示威)」であり、米国としては、北朝鮮にこれ以上挑発を繰り返させないよう中国がその影響力を行使することを希望している。
●(GWは黄海に入るのかとの質問に対し)この問題は米韓のみで検討しており、中国とは協議していない。合同演習の第2段階以降の詳細についてはコメントしない。いずれにせよ、本合同演習は西海と東海の両海域で行われることになる。