ドイツの電気代が高騰している。現在進められている脱原発を主軸としたエネルギー政策が主因であるのは自明の理だが、脱原発を推進していた人たちは、つい最近まで、エネルギーの転換にはお金が掛からないと主張していたのだ。
太陽も風も無料で、しかも無尽蔵にある。それを利用すれば、安くてクリーンな電気が手に入りますよと言われれば、誰でも喜んで飛びつく。しかし、現実としては、電気はどんどん高くなり、脱原発の決定以来、毎年CO2の排出量が増えている。
持てる者は助成金で儲かり、持たざる者は高い電気代を払う
なぜ、電気代が高騰しているかというと、庶民の電気代の中に、再生可能エネルギー(以下再エネ)の助成金が乗せられており、その助成金がうなぎのぼりで増えているからだ。
今では電気代の5分の1が助成金の分で、つまり、私たちはそれを、電気代と共に自動的に負担させられているということになる。しかも、助成金の割合は近い将来、減るどころか、まだまだ確実に増えていく。
すでにドイツ人の払っている電気代は、EUでデンマークに次いで2番目に高い。1位になるのも時間の問題かもしれない。つい最近まで、緑の党は、「脱原発は、ドイツ国民にとって、アイスクリーム1個分ぐらいの負担にしかなりません」と言っていたのだから、高いアイスクリームだ。騙されたと思っている人は多いだろう。
何がこの助成金を吊り上げているかというと、再エネで作られた電気の買い取りにかかるお金だ。ドイツには再生可能エネルギー法というのがあり、そこには、再エネで生産された電気は、全量を20年間にわたって買い取ってもらえるということが明記されている。
そのため、再エネ産業への参入を確実な投資と見て、大規模なソーラーパークやウインドパークが急増し、あるいは、持ち家のある人は屋根にソーラーパネルを取り付けた。
そこで作った電気はすべて、市場価格よりも高い値段で買い取ってもらえる。その結果、当然のことながら、買い取り値段と市場への卸売価格には差ができてしまい、その差額を助成金で補っている。しかも困ったことに、供給量が増えると、市場での電気の価格が下がるため、再エネの電気が多くなると、電気代は上がる仕組みだ。
再エネを発電している人は、それでも助成金で儲かるのでよいが、負担しているのは、再エネ産業に投資するお金も、パネルを取り付ける持ち家も持たない庶民がほとんどなのだから、不公平な話ではある。