新興国は軒並み成長率減速と物価上昇圧力に直面

 新興国の経済情勢の悪化が目立ってきている。代表的な新興国である、ブラジル、ロシア、インド、中国およびインドネシアの5カ国について、2010年から2013年までの成長率の推移を見ると、全ての国が低下傾向を辿ってきていることが分かる(図表1参照)。

【図表1】新興国の実質GDP成長率(単位:%)(資料:IMF世界経済見通し)

 ただし、昨年の成長率を比較すると、5カ国の間で大きな開きがある。中国は7.7% と引き続き高い成長率を保ったが、インドネシアは5.3%、その他の国の成長率は4%を下回り、ロシアに至っては1%台まで低下している。

 2010年にはタイ、マレーシア、フィリピン、トルコ、南アフリカ、メキシコ等その他の主要な新興国も軒並み5%を上回る成長率に達していた。しかし、それらの国々の中で2013年に5%を上回ったのは中国、インドネシア、フィリピンの3カ国のみとなった。

 この間、同じ5カ国の消費者物価を比較すると、中国以外の4カ国は昨年の上昇率が6%を上回り、横ばいまたは上昇傾向を辿ってきている(図表2参照)。

【図表2】新興国の消費者物価上昇率(単位:%)(資料:IMF世界経済見通し)

 通常であれば、成長率が低下すれば、国内の需給バランスが緩和し、むしろ物価は低下するのが自然である。しかし、中国以外の4カ国は逆に物価上昇率が横ばいないし高まっており、景気減速の下でインフレ圧力に直面している。同様の状況はトルコや南アフリカなどでも見られている。これらとは対照的に、中国の消費者物価上昇率は2012年、2013年とも年平均2.6%と安定した推移を辿っている。