3月10日に発表された2014年1月の経常収支は1兆5890億円の赤字と、第2次石油危機を超える大幅な赤字になった。2013年(暦年)の経常赤字は年間で3兆3000億円なので、その半分近い赤字が1カ月で出たことになる。これから年度末に駆け込み需要がさらに増えると、2013年度は経常赤字になるおそれが強い。
10日に発表された2013年10~12月の実質成長率(2次速報値)も、年率0.7%と下方修正された。この最大の原因も、外需(純輸出)が大幅なマイナスになったことにある。今まで国内の需要不足を補っていた輸出がマイナスになり、景気を悪化させているのだ。
原発停止でGDPの1%が吹っ飛んだ
1年前に安倍晋三首相が「デフレ脱却」を唱えて、円安論者の黒田東彦氏を日銀総裁に指名したとき、彼は「円高の是正は日本経済にプラスだ」と述べた。彼の希望通り1ドル=80円台だった為替レートは100円台まで円安になったが、それで起こったことは彼の期待とは逆に、輸出の減少と輸入の増加だった。
これが経常収支(貿易収支+所得収支)が急速に悪化した最大の原因だ。所得収支はあまり変わらないが、図のように貿易赤字が大きく拡大した。
輸入が増えた最大の原因は、原発の停止でLNG(液化天然ガス)の輸入額が2010年に比べて年間3兆6000億円も増えたことだ(原油輸入はほとんど変わらない)。これについて「LNG価格と為替レートの影響が大きい」という意見があるが、それを差し引いたネットの影響はどれぐらいだろうか。
貿易統計によると、この3年間にLNGの輸入量は17.5%増えたが、同じ時期にドル/円レートは25%上がり、LNG価格(ドル建て)は150%近く上昇した。この時期に原油価格も120%上がったので、この差の30%が原発停止によってスポットで買いに行ったための価格上昇と考えられる。
こうした価格変動の影響を除くと、2013年は約2兆円が原発停止で失われたと推定される。同じ計算で2011年には約1兆円、2012年には約2兆円、合計で(為替と原油価格の影響を除いても)約5兆円が失われた。GDP(国内総生産)の1%が原発停止で吹っ飛んだわけだ。年率0.7%成長の経済で1%の損失は大きい。