民間食品会社が食品の安全性の問題に果たす役割は明らかだ。しかしアジアで拡大しつ
つある肥満の問題に関しては、不明な部分も多い。

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 アジア太平洋地域で、肥満がまん延する兆しを見せている。同地域の先進国では、生活水準の向上や体を動かさないライフスタイルの拡大などを背景とした肥満率の増加が見られ、非伝染性疾患の医療コスト増加に悩む政府は懸念を深めている。

 体重130kgの南アフリカ出身シェフによる労働ビザ更新の申請が、適切な健康基準を満たしていないという理由で却下された最近のニュージーランドのケースはこうしたトレンドの反映だろう。同国政府関係者によると、同氏は“深刻な肥満”により糖尿病・高血圧・心臓病にかかるリスクが高く、国の医療制度に今後大きな経済的負担を与えかねないというのが却下の理由だ。

 同国の憂慮すべきトレンドを考えれば、政府の言い分もあながち否定できない。WHOの最新データによると、太り過ぎあるいは肥満(BMIが25kg/m2以上)に分類されているニュージーランド男性の割合は2010年時点で73.9%と、2002年時点の65.2%から確実に増加している。一方中国では、男性の肥満率が2002年の27.5%から2010年の45%と、急速な拡大を見せた。

 注目すべき例外は日本だ。同国女性の肥満率は、同時期に18.6%から16.2%へと減少している(ただし男性の場合は、25.3%から29.8%に増加)。

 急成長を遂げるアジア新興国でも、低栄養価の食品を過度に摂取した肥満児が増加するなど、肥満がまん延する最初の兆しが見られる。

 中国では、所得・教育レベルの高い家庭で育った子供の方が肥満になる確率が高い。伝統的に男子は優遇され大切に育てられるため、富裕層や特権階級の子弟が肥満に陥るケースも目立つようだ*14

 同国の子供の肥満率は、1985~2010年にかけて0.2%から8.1%に上昇しており、特に男子は女子に比べて増加のペースが速い(2010年時点でそれぞれ11%・5.2%)*15

 先進国で肥満になる傾向が強いのは、生鮮食品より安価で、塩分・脂肪分・糖分を多く含む加工食品を大量に消費する低所得者層だ。一方、発展途上国では、富裕層に肥満が多い。伝統的にずんぐりとした体格が健康のしるしと見なされてきたインドは、そのよい例だろう。

 The Diabetes Foundation(糖尿病財団)の研究によると、同国は子供の栄養不良率が世界で最も深刻なレベルにある一方で、中間所得層の子供では推奨値の4倍もの食品を消費しているケースもある。デリーでプライベートスクールに通う子供の3人に1人は肥満状態にあるという。

肥満解消に向けた取り組み

 肥満のまん延を防ぐため、アジアの先進国は生活習慣の改善を促す様々な方策を打ち出している。例えば、台湾はすでに医療支出の10%を関連疾患に費やし、肥満による財政負担の増大に危機感を募らせている。これを受けて、同国政府は肥満解消を重要課題の1つに掲げ、全国的キャンペーンを展開した。

 2011~12年にかけて、国民2330万人のうち約150万人が肥満解消プログラムに参加し、各地域の保健所・病院・学校・コミュニティ・企業などから食習慣やエクササイズに関するアドバイスとサポートを受けている。政府は、国民全体で目標値を上回る合計220万kgの体重減少を達成した同プログラムが、たしかな成果を収めたと考えている*16

*14=“Childhood obesity: What is happening in China?”China Express, Issue 4. Li,Mu, China Studies Centre Academic Group, University of Sydney.

*15=“Secular Trends of Obesity Prevalence in Urban Chinese Children from 1985 to 2010: Gender Disparity”, Song Y, Wang HJ, Ma J,Wang Z PLoS, 2013. 同論文の著者は、性別年齢別BMIパーセンタイル値が95以上の子供と若者を肥満と定義し、18歳の女性・男性の場合はBMIが28kg/m以上の場合に肥満と見なしている。

*16=“Taiwan wages nationwide battle with the bulge”, BBC News, 15th February 2013.