1月21日火曜日に、私がスーパーでの買い物を終えて午後2時過ぎに帰宅すると、家の電話に留守電が入っていた。ただし、相手の電話番号に見覚えはない。「誰だろう?」と思いつつ〈用件〉を再生させると、「はじめまして、講談社・フライデー編集部の○○と申します。ご相談したい件があり、お電話しました」とのことで、私は動揺した。

 私は家庭においては「主夫」であり、小学校教員の妻との間には2人の息子がいる。毎年の年賀状には家族4人の写真を載せるのが恒例という、小説家にあるまじき円満な家庭を営んでいる。もちろん、浮気や不倫等の破廉恥行為はしていない。

 しかし、相手は「フライデー」である。後ろ暗いところはまったくないにもかかわらず、どういうわけか胸のあたりがザワザワした。

 「まさか、オレの名前を騙って悪事を働いたヤツがいるんじゃないだろうな」

 たいしてネームバリューもないくせに、自分でも訳の分からない疑心暗鬼に陥っていると電話が鳴った。ディスプレイには、今しがた再生させたばかりの留守電と同じ電話番号が表示されていた。着信拒否のボタンを押してしまおうかと逡巡しつつ、私は受話器を取った。

 「はい。佐川です」

 「はじめまして、私、フライデー編集部の・・・」

 「ええ、留守電を聞きました。それで、相談というのは?」

 「あの、『明日、ママがいない』というテレビドラマについてなのですが・・・」

 その瞬間の私の安堵と、ほぼ同時に訪れた緊張をどう表現すればいいだろう。動じやすい自分を情けなく思いつつも、私は編集者からの「相談」に神経を集中した。