「外国人労働者を受け入れるか否か」。少子高齢化と労働力人口の減少を受け、日本ではこうした議論が沸き起こっている。
一方、日本に在留する外国人(外国人登録者数)はこれまでに200万人を超えている。既に外国にルーツを持つ多数の人が日本で暮らし、就労している状況があるのだ。
「移民社会」や「多文化社会」という言葉からは、米国や欧州をイメージする人もいるだろう。だが、欧米に比べれば人口に占める外国人の比率は低いものの、日本も多様な背景を持つ人々と暮らす場所となっている。
そんな中、介護の世界に外国人が進出していることをご存じだろうか。
外国人と介護といえば経済連携協定(EPA)によるものが知られているが、これに先立ち、介護現場で外国人が就労し、介護労働を担っている。今回、外国人と介護職について3回に分けてリポートする。
フィリピン人介護士5000人が登録
外国人の介護人材を見る上で大きな存在感を示してきたのが、外国人向け介護人材養成スクール「東京ケアギバー・アカデミー(TCA)」だ。TCAは、フィリピン人向け通信サービスなどを提供するアイ・ピー・エス(本社・東京都中央区、IPS)が運営してきた。
東銀座の歌舞伎座のすぐ近くにあるIPSの本社を訪問した。出迎えてくれたのは、IPSの国際人材グループのマネジャーを務める若栗正樹さん(42歳)。人材紹介業務のベテランで、これまでに日本人、中国人、フィリピン人といった多様な人材の紹介業務に携わってきた経験を持つ。
IPSでも多くのフィリピン人とかかわり、フィリピン人求職者の事情に詳しい上、さまざまな介護施設とのネットワークも持つなど、介護現場の状況にも通じている。
若栗さんによると、TCAは2005年に開校し、主に永住ビザを持つフィリピン人を対象に、介護の仕事の入り口となる「訪問介護員養成研修2級(ヘルパー2級)」(2013年4月から「介護職員初任者研修」に移行)の資格取得に向けた講座を運営してきた。
IPSはもともと、フィリピン人向けの通信サービス、メディア、通信販売といった事業を手がけ、在日フィリピン人向けのタガログ新聞「ピノイ・ガゼット」も発行している。以前から在日フィリピン人とのつながりを構築してきたことから、フィリピン人をはじめ外国人向けの介護人材養成講座の設置に至ったという。