2013年11月18日、あまり前例のないシンポジウムが東京で開催され、筆者もプロジェクト代表として参加した。国際ビジネス・コミュニケーター協会ロシア支部(IABC/Russia)とモスクワ・ニュース紙共催の「文化の日ロ対話:企業とメディアの役割」と題したシンポジウムである。

 少し前の話になってしまうが、ロシアに関心を持つ向きには重要なテーマだと思うので、この場を借りて議論の中身を紹介させて頂きたい。

 まず、なぜ、このシンポジウムがそれほど異例だったのか? 企業とメディア――どんな国においても社会の2つの支柱である組織――が事実上初めて、議論するために互いと向き合ったからだ。日本とロシア双方の企業とメディアが参加したから、なおのこと面白かった。

 また、最近「清算」されることが発表されたロシアの報道機関で今回シンポジウムに協賛したRIAノーボスチの素晴らしい通信インフラのおかげで、こうした対話は初めて、テレビ会議形式で行われた。

企業とメディアの対話が重要だったのは、なぜか?

 グローバル化した世界では、企業に関するメディア報道は投資の意思決定に影響を及ぼすように見える。我々がシンポジウムで知ろうとしていたのは、ネガティブなメディア報道の嵐のせいで日ロの事業協力の機会が封じられてしまうのか、ということだった。メディアに反映される「バーチャルな経営環境」とビジネスの現場との溝は一体どこにあるのだろうか?

シンポジウムの東京会場のスピーカーたち

 ビジネスセッションでは、東京のスピーカーたちが日本企業とロシア企業による最近の業務提携の様々な事例を検証した。

 重要なポイントの1つは、ロシアは崩壊した旧ソ連とは大きく異なる新たな国家として扱うべきなのに、欧米と日本のメディアはまだ、ソ連の後継国としてのロシアのイメージを抱いている、ということだった。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)の梅津哲也主幹(ロシアCIS担当)と、JBpressのコラム執筆者でもあるUMJロシアファンドのマネージング・パートナー、大坪祐介氏は、収益性と事業計画に対して日本企業とロシア企業が抱く期待の差異を強調した。すなわち日本企業の長期主義とロシア企業の短期主義が議論になった。

 この点に同意したのが、タイシ・グローバル社長のイゴール・ディアチェンコ氏で、モスクワ側のスピーカーだった同氏は、日ロのビジネス関係では時間が極めて重要な要素になると語った。ディアチェンコ氏自身、日本のパートナー企業と組んでから7年経った後に大成功を収めている。

 国ごとの企業風土を学び、事業活動をその国の条件に適応させることは当然だが、その必要性は簡単に忘れられてしまう。興味深い指摘をしたのが、IABC日本支部代表の雨宮和弘氏だ。日本はグローバル化のプロセスに加わることを熱望しているが、日本は一体どんな意味で「グローバル化」を理解しているのか、という点だ。

 実際、異文化マネジメントの著名コンサルタント、渥美育子氏が著作で述べているように、日本はこのプロセスの中心に自国を置き、その流れに追随するよう他国に呼びかけているという。