韓国を代表する女性財閥総帥2人がそろって海運不況の直撃を受け、そろって苦境に陥っている。夫の急死で専業主婦から経営者に転身したが、業績不振で主力事業の売却や義兄への支援要請を決めた。「オーナー会長後継者の妻」の座の過酷さも垣間見える。
2013年12月23日、韓国メディアは一斉に、「現代グループ、現代証券売却を軸にした再生計画を発表」と報じた。
現代グループが、韓国の証券業界で資産規模4位の現代証券を売却して金融事業から撤退し、他の金融会社や遊休資産などの売却とも合わせて3兆ウォン(1円=10ウォン)以上を調達して生き残りを目指すという内容だ。
30大財閥からも転落した現代グループ、亡夫の無念を晴らそうとしたが・・・
現代グループは、主力の現代商船が海運不況の直撃を受けて不振だ。金剛山(クムガンサン)など北朝鮮観光事業も南北関係の悪化でストップしたままで、資金繰りが悪化していた。そこで韓国で知名度がある現代証券を手放すという苦渋の選択に踏み切った。
現代グループというのは、かつてサムスングループと並んで韓国最大最強の財閥だった。ところが、今は、現代商船、現代エレベーター、現代証券などが主力で、「30大財閥」からも転落している。
というのも、現代グループ創業者の鄭周永(チョン・ジュヨン)氏の晩年に、息子たちの間で事業継承を巡る争いが起き、現代自動車、現代百貨店、現代重工業、現代海上火災保険などを鄭周永氏の息子たちが率いて独立してしまったのだ。
結局、鄭周永氏が後継者と考えていた五男の鄭夢憲(チョン・モンホン)氏の元には、赤字続きだったハイニックス半導体(現SKハイニックス)や現代商船などの企業と晩年の鄭周永氏が「最後の大事業」として力を入れた観光など北朝鮮関連事業だけが残った。
優良企業が出ていって「抜け殻」となった現代グループに追い討ちをかけるような悲報が2003年10月、韓国中を駆け巡った。鄭夢憲氏がソウル中心部の本社執務室から投身自殺したのだ。鄭夢憲氏は、北朝鮮に対する不法資金送金の容疑で検察で厳しい取り調べを受けていた。
総帥を失った現代グループ。後継者になったのは専業主婦だった夫人の玄貞恩(ヒョン・ジョンウン=59)氏だった。父親は現代グループ幹部、母親は教育者として知られるが、本人は、ソウルの名門女子高から梨花女子大社会学科、同大学院を修了して鄭夢憲氏と結婚して主婦になった。
経営者としての経験がない玄貞恩氏が経営者の道を選んだのは、亡夫の無念を晴らしたいとの強い意欲だったようだ。