12月13日、旧暦の冬至に当たるこの日に、スウェーデンの伝統行事「ルシア祭」が、ほぼ全国のキリスト教会で大々的に行われる。各地の幼稚園と学校、病院や高齢者が入居する施設などでも行われている。
次女が通う幼稚園でも今年も家族が招待され、朝8時からの祝祭が行われた。
白いドレスを着た聖ルシアやトムテン(北欧風サンタクロース)、ジンジャーブレッドマンや、星を飾った円錐形の帽子をかぶって「星の少年」(stjärngossar)などに扮した子供たちが「サンタ・ルシア」を歌いながら入場し、たくさんのクリスマスの歌を披露してくれる。
その後、前日に子供たちが焼いたペッパーカーカ(ジンジャークッキー)とルッセカット(サフラン入りパン)が振る舞われるのが恒例だ。
ルシアというのは4世紀に殉教したシチリア島の聖女である。本国イタリアではほぼ歴史に埋もれているにもかかわらず、北欧では彼女の聖名祝日を祝う行事として、暗く寒い北欧の冬を彩る光の祭典となって連綿と祝われている*1。
北欧風サンタや「星の少年」禁止の波紋
南スウェーデン・スコーネのアルヴィク小学校は、今年のルシア祭では「トムテンや『星の少年』の扮装をしない」ことを決定し、その旨を生徒と父兄に通達した。
この決定に至った経緯として、同校があるコミューンは「よりスウェーデンの伝統に忠実な形でルシア祭を再現することを意図したため」としているのだが、それが本当かは疑わしいように筆者は感じる。
南スウェーデンは比較的移民が多い地なので、恐らくスウェーデンの(あるいはキリスト教関連の)伝統行事に子供を参加させたくないとする親が多いため、やむなく取られた措置なのではないのだろうか。
同じ記事に、父親の1人は「星の少年」の扮装に関し、「私の息子はそのローブを着用しません」と学校に言い渡したなど、父兄の抵抗があったことが示唆されている。
ルシア祭で伝統的な扮装をしないことを決定した学校に対し、批判や意見の集中砲火が浴びせられ、ソーシャルメディア上でもこのことが広く議論された。中でも最も過敏に反応したのは「スウェーデンの伝統を守る」ことを信条とするグループで、その1つAvpixlatは「伝統を破壊するテロ」として学校を攻撃している。
その他、ツイッター上でも「スウェーデンの伝統を受け入れることができない移民はここから自由に移動してください」といった書き込みなどが見られた。「移動してください」とは、つまり「出ていけ」ということだ。
同校の校長によると、生徒からも様々な反応があったという。同校は、これらの議論には一切意見を出さないとしているので、生徒からどういった声が上がったのかなど具体的なことは不明だ*2。