2003年11月22日、不正選挙疑惑が深まる中、議会開会を強行したシェワルナゼ政権に対して、若手反対派とこれを支持する群衆が議会場になだれ込んだ。流血の一歩手前で、米ロの介入も功を奏し、グルジアらしい劇的な無血の「バラ革命」が成就した。
一回りした「民主化革命」
グルジア新政権は各地の民主化革命の波にも乗り、米国の指示を背景に、電力事情の大幅な改善、遅配の続いていた給与支給の正常化、、給与正常な支給、汚職警官の一掃といった大仕事を短期間で終え、国際的にも高い評価を得た。
しかし、恣意的な権力行使による国内反対派の弾圧や2008年のいわゆるグルジア紛争を経て、民意を失っていった。
そして、バラ革命からちょうど10年を迎えた2013年11月17日、グルジア新大統領ギオルギ・マルグヴェラシュヴィリが就任式を行った。そこには前任者でバラ革命の立役者であり、10年間にわたってグルジアを率いたミハイル・サーカシビリ前大統領の姿はなかった。
ちょうど1年前の総選挙で大富豪ビジナ・イヴァニシュヴィリが率いる「グルジアの夢」連合が過半数を制し、グルジア独立後初めて平和裏の政権交代が実現した。
その後、今年10月の大統領選挙で再び「グルジアの夢」が推す候補が勝利を収めてミハイル・サーカシビリ大統領の時代は名実ともに終わりを告げた。憲法の新たな修正事項が適用されてグルジアは今後首相が大きな権限を握る新体制に移行する。
NHKのワールドWaveでもコメントしたが、今回はグルジアの顔となる新首相と大統領の2人について初めに簡単に紹介したうえで、今後の新政権の行方について考えてみたい。
31歳の「最高権力者」
新首相イラクリ・ガリバシュヴィリ(facebookのオフィシャルページ)は1982年6月生まれでまだ31歳の若さである。かつて筆者は「大統領は35歳までに決まる?」なる原稿を執筆したが、バラ革命を成就させた時の前大統領が35歳であったからさらに若返った形である。
もっともこの人事は意外なものではない。そもそも前政権打倒に成功したビジナ・イヴァニシュヴィリは政界に進出した直後から早めに表舞台を退く意向をたびたび示していた。
イラクリ・ガリバシュヴィリは昨年の「グルジアの夢」政権発足後、30歳と最も若い閣僚ながら、枢要ポストの内相職を委ねられた。そして、前政権の首相や国防相を逮捕・投獄する一方、警察組織を把握して政権交代に伴う治安悪化などの不安を払拭するなど硬軟両面で指導者の才覚を示した。