ドイツニュースダイジェスト 18 Oktober 2013 Nr. 964

 9月22日の連邦議会選挙では、メルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が得票率を前回比8%近く伸ばして圧勝した。勝利の背景には、メルケルのカリスマ性、そして好調を維持する景気が一因としてあることは明白だろう。

 好景気を謳歌し、欧州で独り勝ちの様相を呈するドイツだが、その陰には所得格差の拡大や貧困問題が内在する。今回は、ドイツの貧困問題と親の貧困が子どもに与える影響について見てみよう。

「貧富レポート」

 2013年3月、連邦政府は「貧富レポート」を発表した。それによると、長期失業者の割合が2007年に比べ40%減少し、貧困状態にある子どもは25万人減少したと報告されている。失業率は1990年の東西ドイツ統一以来、最低を記録し、若年層の失業率はEU圏内で最も低く、高齢者の就業率はかつてないほど上昇しているとされた。

 実際、2013年7月時点のドイツの失業率は5.3%で、EU平均の10.9%を下回る。スペインやギリシャでは失業率が25%を超え、15~24歳の若年層については、失業率が軒並み50%を超えるのに対し、ドイツではここ1、2年、若年層の失業率は10%以内で推移している。

「貧富レポート」が触れない負の課題

 一方、このレポートでは、2010年時点で400万人以上が時給7ユーロ以下の低賃金労働に就いていたことにはほとんど触れられていなかった。

 低賃金労働は、失業率の高い旧東独地域で多く発生している。9月には、ブランデンブルク州のピザ宅配業者が、3ユーロ以下の時給で労働させていたことが発覚した。

 これは、旧東独地域のパートの最低賃金が時給7.50ユーロであることを考えれば格段に安い。失業率の高い同地域では、賃金協約を採用している企業は3社に1社という。

 連邦統計局によれば、月収952ユーロ(手取り)以下の場合が「貧困の危機にあるライン」と定義され、国民の14~ 16%がこれに該当するとみられている。これは、月収が全国平均の60%を割り込んでいる世帯と考えられ、その主な構成者は、長期失業者やひとり親世帯である。

ひとり親世帯の苦渋

 2012年の連邦統計局の調査によると、債務相談窓口を訪れた多重債務者の14%がシングルマザーで、この数値は全人口に占めるシングルマザーの割合の2倍以上に上り、シングルマザーに多重債務者が多いことを表している。

 ちなみに、シングルファザーは総人口に占める割合の28%であった。要因別では、失職が26%と最大であった。