“小説より奇なり”の事件が、ドイツで話題になっている。ミュンヘンの高級マンションの一室から、1400点あまりの絵画が発見された。
それがなんと、ピカソ、ルノアール、クールベ、マティス、トゥールーズ=ロートレック、マルク、マッケ、ノルデ、ココシュカ、キルヒナー、さらに、ディックス、シャガールと、目を疑いたくなるような品ぞろい。
さらにデューラー(1471‐1528)、カナレット(1697‐1768)といった古典も見つかっている。推定価値は10億ユーロ(約1330億円)。
不思議なのは、それらが、鎧戸を下ろしたままのマンションの部屋で、大量のゴミと、何十年も前に期限切れになっているような缶詰に囲まれて、人知れず保管されていたということ。
これらの絵の所有者はコーネリウス・グルリット氏といって、現在80歳。絵と共にひっそりと暮らしていたという。
ナチ政権時代に失われた絵画の一群が忽然と現れた
さらにエキサイティングなのは、見つかった絵画の一部、あるいは大部分が、ナチ政権下で「退廃芸術」の烙印を押された作品、あるいは、ユダヤ人から没収、もしくは、ただ同然で買い上げた作品、あるいは、そのどさくさで行方不明になっていた作品、あるいは、空襲で失われてしまったと思われていた作品であるらしいということだ。
つまり、多くの作品は、70年の歳月を経て、再び、忽然と姿を現したのである。
バイエルン州の検察当局は、すでに2年半も前にこれらの絵画を押収しており、所有権を調査中というが、今まで一切が秘密に保たれていた。
それが、先週、ニュース週刊誌FOCUSのスクープで明るみに出たわけだが、しかし、明るみに出たと言っても、当局は5日の記者会見でも一部の情報を公開しただけだ。
具体的にどんな絵が見つかったかということはほとんど公表していない。また、捜査を秘密にしなければいけない理由は何かという質問にも答えていない。というわけで、今のところ謎だらけなのだ。