サウジアラビアでは女性に運転免許が交付されない。女性のことはすべて、男性の後見人が決める。

 後見人の許可がなければ、女性は、学校に行くこともできないし、働くこともできないし、1人で旅行することもできないし、携帯電話を買うこともできないし、医者に行くこともできない。要するに、何もできない。

 後見人は、父親、兄弟、あるいは叔父などで、彼らが女性の結婚相手も選ぶ。そして、結婚した後は、夫が後見人となる。つまり、女性は死ぬまで独立しない。

 まだある。サウジアラビアの女性は、黒い布で顔と手以外は全部隠さなければならない。選挙権はもちろんない。そして、後見人に許可をもらって働く場合でも、男性と顔を合わせることが一切ない職場でなければいけない。唯一例外の職場は病院だそうだ。

 他人事のようにここまで書いたが、こんな国に生まれなくて本当に良かった。

女性が車を運転して抗議アクションを起こす

サウジ警察、運転禁止違反の女性16人に罰金

YouTubeに投稿された、サウジアラビアの首都リヤド市内を運転する女性を映したとされる映像(2013年10月26日取得)〔AFPBB News

 そのサウジアラビアで、痺れを切らした女性たちがアクションを起こした。去る10月26日、抗議のために、車を運転することにしたのだ。何人の女性が参加したのか分からない。しかし、その結果、14人が逮捕された。

 これまでは、女性が運転して警官に止められても、「金輪際しません」という始末書を書くと、そのまま釈放してくれたそうだが、今回はそうはいかなかった。

 普通でいくと、この女性たちに課せられる刑は鞭打ち10回だそうだ。信じられない!

 ドイツの記者が、この日、サウジアラビアの男性にインタビューしている映像がテレビで流れたが、「運転手を付けてやっているのに、なぜ自分で運転したがるんだ!」と怒りをぶつけている人もいれば、「女が運転すると、精神に負担がかかるし、骨盤と卵巣が圧迫されるので不妊症になる。だから、ヨーロッパでは子供がせいぜい1人か2人しか生まれないのだ」と主張している人もいた。

 「非科学的な!」と一瞬思ったが、確かにヨーロッパの国々は皆、少子化に悩んでいるから、反論に少し困るかもしれない。

 ただ、確かなことは、サウジアラビアにも、この日の抗議アクションに参加したような、施政者とは違った考えを持つ女性がいるということだ。

 そして、その周りには、当然のことながら、やはり施政者とは違った考えを持つ男性がいる。そうでなければ、女性が車のキーを手にし、発進させることが、まず不可能だったはずだ。