今回は、まず商品企画における「モノとコト」という点からお伝えしたい。「モノ」と「コト」を分かりやすく言うと、「モノ」とは形のあるもののことで有形商品、「コト」は形のないもので「無形商品」のことを言う。

「モノ」と「コト」の違い

 例えば、ある地方の和菓子屋さんでは、いつも自然食にこだわった米粉で数種類の和菓子を試作販売してから、納得のいく米粉を使って和菓子を作っていた。

 ここには和菓子という「モノ」と、自然食にこだわったという「コト」が潜んでいる。しかし、この和菓子屋さんはこれまでその和菓子を地元量販店のみで販売してきたため、いつまで経っても消費者からは「モノ」としか見られなかった。

 同じところで売られているその他の和菓子と同様の存在として、保存料入りの賞味期間が長い和菓子であると見られてきたからである。

 そこで、その和菓子のこだわり(コト)を、まずは近隣や県内の人たちに知ってもらおうと、急遽そのこだわりを伝えるチラシを配り、和菓子工場横に「仮店舗」を置いた。「製品」(作っただけのもの)から「商品」(商いになるもの)へと変化させたのである。

 このようにモノをコトに変化させる道具(ツール)は、広告物だけではない。包装紙やラベルでも表現できる。店舗そのもののデザインや店頭ディスプレイ、店内に置くPOP(ポップ)なども使えるだろう。また、DMや名刺なども利用してはどうだろうか。

 まずは、作る(売る)側がいろいろなメディアを活用して、自らのこだわりを発信しなくては、いつまで経っても地域の隠れたお店としての評価しか得られず、いつかは埋もれていくかもしれない。

 先述の和菓子屋さんはやがて、地域にある特産物と、その土地にもともとあった伝統食の技術を使い、ブランドを確立させていった。

 ここでは「あなたの商品と他の商品との違い、またはその商品の考え方(コンセプト)は何ですか」という問いがカギになるのである。言い換えれば、これが明確化されていないと情報発信はできない。

 一方、市場のニーズやウォンツを理解するために、「鳥の目」「虫の目」で市場を見ることも大切になる。鳥の目(マクロ)とは市場を空から大きく見ること(人口の推移や社会環境、技術の革新や変化など)、虫の目(ミクロ)とは市場を身近な目で見ること(生活文化など)の例えである。