昨日の前篇では、シンガポールのランドマーク、マリーナ・ベイ・サンズをご紹介したが、シンガポールを代表するもう一つの統合型リゾート(以下IR)、リゾート・ワールド・セントーサも、メイン・アトラクションがユニバーサル・スタジオ・シンガポールで、世界最大のパノラマ型水族館マリーナ・ライフ・パーク等を併設している。

IRの先駆者、マレーシアのゲンティン・ハイランド「雲の上のカジノ」

世界のIRの先駆者、ゲンティン・グループの創業者、故・林梧桐氏(右)。60歳を過ぎても、開発中のジャングル現場を訪れ、工夫たちとともにシャベルを握ったというほどの現場主義者。左は林梧桐氏の次男でグループ現会長の林国泰氏(写真提供:筆者、以下同)

 特筆すべきは、このリゾート・ワールドを開発したマレーシア・クアラルンプールに本社を置くゲンティン・グループ。今でこそアジアやラスベガスを中心に注目される世界的なIR施設だが、それを半世紀前にクアラルンプールのジャングルで発案、建設。

 現在の“IRの生みの親” と言われるのが同グループの創業者、故・林梧桐(リム・ゴートン)氏。

 当時ジャングルだった標高約2000メートルの荒地を開拓、今では「マレーシアのラスベガス」とも称される高原リゾート、「ゲンティン・ハイランド(Genting Highland、中国語:雲頂高原)」、すなわち「リゾート・ワールド・ゲンティン」を大成功させたアジアのビジネス界で知る人ぞ知る起業家の神様でもある(中国語名=雲頂の意味は「雲の上」)。

 1937年、19歳のときに中国・福建省から無一文で、叔父を頼り、マレーシアに船で渡ってきた林氏。大工見習いから始めて、建設業に携わり、一心不乱に働きつめて、ふと仕事で立ち寄った高原で、アイデアが浮かんだ。

クアラルンプール郊外にある標高2000メートルの熱帯の高原リゾート「ゲンティン・ハイランド(中国語:雲頂高原)」。その名の通り、“雲の上のカジノ”。100万年の太古の熱帯雨林に抱かれた高原リゾートには、何千という希少な動物や植物も生息する

 「常夏のマレーシアだが、ここ高原は涼しくて気持ちがいい」、ダム建設で訪れた高原で、酷使した体を癒やしてくれたのが、100万年の太古の熱帯雨林に抱かれた壮大な自然だった。

 手つかずのジャングルの開発は不可能と言われたが、途中数多くの困難に遭遇しながらも諦めずに開発を遂げたゲンティン・ハイランドは、マレーシアで唯一の政府公認のカジノを付設。現在でも世界的に稀な熱帯にある高原リゾートとして、世界からの観光客が後を絶たない。

 今では、英国、米国、香港、フィリピン、シンガポールなどでもIRリゾート開発を展開し、ほかにも石油・天然ガス開発、造船、不動産開発など、アジアでも屈指の大財閥グループとして成長したマレーシアの巨大グローバル企業だ。