過去数年間、日中間では8月から9月にかけ、やたらと不愉快な事件が起きている。今年もまた8月がやって来た。今度こそは静かなお盆となるのだろうか。今の筆者に公開情報以上の知識はないが、8月15日までの日中関係はやはり気になる。されば、今回も筆者の独断と偏見に基づく分析を試みよう。(文中敬称略)
強気と弱気が交錯
最近の中国側の動きを見ると、強気と弱気が奇妙に交錯しているように思える。
例えば、7月17日の安倍晋三首相の石垣島遊説について、中国網は「(同首相の)強硬な態度は、中国の戦略界および軍部にとって一文の価値もなく、日本の外交・軍事に詳しい識者にとっても無駄口に過ぎない」と切り捨てた。
参院選勝利後も、安倍首相が「前提条件のない首脳会談」を呼びかけたことに対し、7月29日、中国の外交部報道官は「中身のないスローガンを用いて、意見の不一致を覆い隠すべきではない」と批判したそうだ。外交部報道官ごときに言われる筋合いではないが、中国側の強気だけは伝わってくる。
8月11~12日に北京で予定されていた2つの日中シンポジウムも事実上中止となった。なぜか筆者もその1つに招待されていたが、中国側からは「種々の原因でやむなく延期される」とだけ連絡があった。もうそれ以上詮索する必要がないくらい、理由は明白だった。
一方、中国側の弱気も垣間見える。7月30日夜に解放軍建軍86周年慶祝レセプションが開かれた。当日筆者はやむなく欠席したのだが、驚いたことに在京中国大使館から「なぜ来ないのか」と催促の電話が入った。筆者など数百人の招待客の1人に過ぎないのに、こんな電話をもらったのは初めてだ。
さらに、翌日、同レセプションに出席した友人によれば、「中国との経済関係が悪化しても日本側が対中強硬姿勢を続ける理由は何か、などと会場のあちこちで日本人に質問していた」そうである。前日の電話といい、こうした質問といい、内心中国側は日本側が強気である理由が気になるのだろうか。
理由は簡単。安倍政権が中国側の理不尽な要求に屈しないからだ。今のような緊張状態が続けば日本も困るだろうが、中長期的にもっと困るのは中国側。
中国経済成長が鈍化するなか、欧米の対中投資は減っている。中国経済が真に必要とする投資と技術を提供できるのはやはり日本企業だろう。