麻生太郎財務相の憲法改正についての発言が話題を呼んでいる。各社の報道でニュアンスが違うが、おおむね次のような趣旨の話をしたようだ。

 「(憲法改正が)騒がれるようになった。ドイツのワイマール憲法もいつの間にかナチス憲法に変わっていた。誰も気が付かなかった。あの手口に学んだらどうかね」

 これは改憲派の集会で「あまり騒ぐな」という趣旨で言ったものらしいが、彼は歴史を誤解している。確かにナチスは憲法を改正しないでヒトラーが非常大権を握って独裁制にしたが、それは「誰も気が付かない」うちに整然とやったものではないのだ。

山本太郎氏はヒトラーになるか

 今の日本がワイマール体制、特に1930年代のドイツと似ているというのは、よく指摘される。ワイマール憲法は第1次大戦に負けたドイツが、世界で最も民主的な憲法を作ろうとしたもので、比例代表で国民の意思が正確に反映される選挙制度だった。

 しかし比例代表の下では、単独で政権を取ることが難しいため連立政権になり、各党の主導権争いで不安定な政権が続いた。特に1929年から始まった世界大恐慌によって失業率が40%を超える経済危機になると、大衆の不満が「強い指導者」を求めた。

 今の日本でも、似たような現象が起きている。参議院東京選挙区で、山本太郎氏が66万票以上を得て4位で当選したことは、多くの人を驚かせた。彼は単なる無所属候補ではなく、革共同中核派が組織を挙げて運動を支援し、山本氏も中核派の反原発運動に参加している準構成員だ。

 中核派は暴力革命を目指し、他の党派に対する「内ゲバ」で50人以上を殺害してきた日本最大のテロリスト集団である。その支援する候補者が選挙で当選するというのは、先進国には例を見ない現象だ。山本氏は当選の第一声で「力を貸してくれた人たちに命を狙われるのが怖い」と真顔で言った。

 もちろん今の日本は30年代のドイツとは違い、山本氏が1人で国会に乗り込んでもテロリストが権力を掌握することはできない。ヒトラーの強い指導力の下で強大な組織を持っていたナチスとは違って、山本氏は放射能デマを流して「原発を廃止しろ」と言う以外は何も政策がなく、大きな勢力になるとは思えない。