参議院選挙で自民党が大勝し、憲法改正議論が本格化する気配である。政党によって、改憲、加憲、護憲など立場は様々だ。

 戦後、日本は日米同盟の枠組みでアメリカによって守られてきた。無論、日本はその分のコストを払ってきた。改憲を主張する政治家は、アメリカに防衛費の一部をコストとして払うよりも自衛すべきだと主張する。護憲を主張する政治家は日米同盟に反対する。だが、実質的に国防は日米同盟に委ねるしかない。要するに、戦争が起きたとき、日本は自衛するか、それともアメリカを頼るか、という選択である。

 中国でも、憲法(中華人民共和国憲法)を巡る論争が起きている。

 経済改革を中心とする「改革開放」政策が行き詰まりつつある。その中で、政治改革を求める声が日々高まっている。一部の憲法学者は「憲政」の徹底を求めている。すなわち、憲法を尊重し、その決定に基づいて国の運営を実行すべきだというのだ。

 その真意は、共産党と政府の権力を法的に制限しようとすることである。現在、共産党の意志決定は、実質的に憲法よりも上位に位置づけられている。憲政の徹底は自ずと共産党の指導体制を脅かすことになる。

 それに対して、保守的な左派の学者(注:日本で「左派」は革新的な勢力を指すが、中国では保守的な勢力を指す)は、憲政は資本主義の専売特許であり、社会主義中国では憲政は適さないと主張する。つまり、共産党指導体制を堅持するために、護憲を主張するのである。

社会主義を理想とする左派勢力

 現実的に見ても、歴史的な観点から見ても、社会主義体制は失敗に終わった。しかし、中国では、社会主義体制が依然として左派勢力によって支持されている。「改革開放」政策が30年以上経過したが、毛沢東時代の名残は依然として根強く残っている。

 1990年代、冷戦が終わり資本主義と社会主義のイデオロギー論争は終結した。だが、中国社会、とりわけ学界では、イデオロギーの違いを理由に、自由化と“the rule of law”(法による統治)に反対する左派勢力が存在する。