中国自動車工業協会の発表によれば、2013年5月の乗用車の販売台数は139万6900台で、2012年の128万1900台に比べ9%増加した。中国の自動車販売台数は、2013年に2000万台を突破するとも言われている。

中国乗用車販売台数 (単位は万台) 、中国自動車工業協会のデータより筆者作成

 自動車全体の需要は引き続き旺盛のようだ。一方で、乗用車の伸びは芳しくない。「中国全体の景気に不透明感がある」との見方もあるが、筆者はそれだけの理由ではないと見ている。歪んだモータリゼーションが健全な市場育成を阻んでいると言えないだろうか。

 筆者は先月も上海市内の住宅街でこんな場面に遭遇した。路上に乗り上げたクルマが道行く人の行き来を妨げる。たまりかねた初老の男性が叫んだ。

 「おい、お前、こんな所にクルマを止めるな!」

 怒鳴られた若者はすかさずこう切り返した。

 「止めるところが他にないんだよ!」

 あわやつかみ合いとなるところを、“近所の顔役”が出てきたのか、ことなきを得た。しかし、ここ上海でも駐車を巡る言い争いは日常茶飯事だ。

 大学のキャンパスも、ここ数年でガラリと表情が変わった。いつも学生らが集まっていたバスケットコートは駐車場と化してしまった。おそらく教員所有のものだろう。「クルマで通勤」はもはや当たり前になりつつある。

市民を悩ます騒音と渋滞

 上海は北京と並んでマイカー保有が急速に進行している都市の1つだが、便利な反面、多くの社会問題を生んでいる。排ガスによる大気汚染は日本でも度々報道されているが、「騒音」も市民の抱える悩みの1つだ。