現在、スウェーデンに難民として入国する人のうち、最大の人数を占めるのがシリア国民だ。昨年シリアから入国した難民は一昨年と比較して3倍に増えたが、この数はさらに増加することが予測されている。

 不足する住居をはじめ、違法滞在者にも医療や教育の権利をほぼ認めているスウェーデンにとって、難民受け入れが国家財政に与える影響は大きい。移民・難民政策に関し、連日大きな議論が繰り広げられ、国論を真っ二つにしている。

「中東の平和」イコール「欧州の平和」

国連総会、シリア内戦激化でアサド政権非難決議採択

欧州にとって、地続きで近い中東の問題は常に身近〔AFPBB News

 5月9日には、難民キャンプを視察した自由党議員らが「我々は人々を保護し、支援することの重要性を強調したい」とし、欧州連合(EU)加盟国はビザの要件を廃止して無条件で難民を受け入れるべきであるという声明を出した*1

 これにまた賛否両論が渦巻いている。

 移民・難民問題は次期選挙の最大の焦点になるとも言われており、この問題の平和的解決なくしてスウェーデンの安泰は考えられないだろう。極端に言うと、大挙して押し寄せる難民の波がこのまま増え続ければ、スウェーデン財政は破綻、国家分裂の危機だ。「シリアの平和」はイコール「スウェーデンの平和」、ひいては「中東の平和」イコール「欧州の平和」なのだ。

 この戦争が終結し、難民の波が沈静化する可能性はあるのか、あるとしたらどういった形でそれを迎えることになるのか。

 シリアのバシャル・アル・アサド大統領の圧制に対抗する民衆蜂起「シリアの春」から始まったとされている内戦は、開始以降すでに2年余りが経過している。さらに現在、この機に乗じて紛争に介入しようとする米国と欧州、さらに周辺国を巻き込んで、現在までに8万の命を奪い、150万の難民を生み出している*2

 筆者がもし、中東から遠く離れた日本にずっと住んでいたとしたら、どれほど関心を持っていたかは分からない。ただ、スウェーデンで暮らしている以上、シリア戦争は否が応でも関心を持たずにはいられない問題だ。今回は欧米の様々な報道から、米欧露、そしてアサド大統領らそれぞれが描く「シリア戦終結」の青写真についてまとめてみた。

シリア「友人」会合

 シリア反体制派を支援する米欧や中東諸国による「シリアの友人会合」が5月22日夜、ヨルダンで開かれ、ジョン・ケリー米国務長官、ウィリアム・ヘイグ英外相など11カ国の外相が出席してシリア和平に向けて努力することを確認した。

 参加国は米国と欧州のほか、北大西洋条約機構(NATO)の同盟国のトルコ、エジプト、さらにシリア反体制派へ武器を供給するサウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)などだ。

*1http://www.dn.se/debatt/avskaffa-visumkravet-for-flyktingar-fran-syrien

*2http://www.foreign.senate.gov/press/chair/release/syria-transition-support-act-introduced-by-menendez-corker-passes-senate-foreign-relations-committee-