今年の2月、ドイツに新しい政党ができた。AfD(Alternative für Deutschland)、直訳するなら「ドイツのためのもう1つの道」。4月14日の第1回党大会の様子は、大々的に報道された。

ユーロへの懐疑を背景にドイツのインテリ層が新党旗揚げ

 この政党の主張はただ1つ。ユーロ圏からの撤退だ。ユーロ自体をなくそうというのではなく、ユーロ圏から抜けることを可能にすべきだという主張。

 党員は圧倒的に男性、しかも年配者が多く、そういう面々が「マルクに戻ろう」などと気勢を上げていると、なんとなく「爺さん方のノスタルジー」に見えがちだが、しかし、バカにすることは禁物。

ドイツの新党、AfDのホームページ

 なぜならこの新政党には、すでにかなりの数の学者、経済人、そして、大手のメディアのマネジャー級のジャーナリストたちが、シンパとして名を連ねているからだ。

 AfDのホームページには、彼らの名前が長いリストになっている。

 党員数は5月半ばの時点で公称1万2000人。党の代表は3人で、1人は「フランクフルター・アルゲマイネ(Frankfurter Allgemeine)」紙や「ディ・ヴェルト(Die Welt)」紙で主筆を務めていた著名なジャーナリスト(71歳)、1人はハンブルク大学の政治学と経済学の教授(51歳)、そして、もう1人は化学者で実業家の女性。

 彼女は去年、37歳という若さで、その研究に対してドイツ連邦共和国功労勲章を受けている。要するに3人とも、知性面でも思想面でも、どこから見ても非難される言われのない身の上だ。

 ユーロ危機が始まってすでに久しい。EUはこの数年間、ひたすらその対策に励んできたが、事態は好転していないどころか、ますます悪化しているように見える。

 すでにドイツのかなりの税金が、金融破綻国の救済につぎ込まれている。ドイツ国内では、破綻国救済の具体的方法に関しては異なった意見があるが、しかし、「ユーロなくしてEUはない。EUなくしてドイツはない」という考えにおいては、主要政党は皆、意見を一にしている。

 EUは、ドイツがヨーロッパの一員として生き延びるために存続しなくてはいけない。だから、金融破綻国を何が何でも助けなければならないのだ。

 そうするうちに、ユーロの存在に疑問を呈するのは、利己的、独善的、反社会的で、ひいては反ヨーロッパ的邪念であるといったような観念が植え付けられてしまった。