現在のスウェーデンの教育は、ほとんど崩壊寸前だ。この状況をもたらしたとしてやり玉に上がっているのが、1990年代に行われた2つの大きな教育改革だ。

 1つは「教育の地方分権化」。それまで教育は、国家による強力な中央計画の下で行われていた。この中央集権化されていた教育計画を大きく転換し、公立学校を運営する地方自治体や、個々の私立学校に経済・社会的責任を置く「地方分権改革」が行われた。

 もう1つは「フリースクール改革」だ。フリースクール改革とは、「個人の選択の自由を尊重する」という名目の下、自治体が運営する地域の学校と並行して私立制の学校を導入し、個々人が行きたい学校に自由に通学することができるというものだ。

「地方分権改革」が招いた学力低下と学校間の格差拡大

スウェーデンの高校の教室

 前者の地方分権化が、この数週間大きく批判されている。教職員や議員、作家などが連名で「国はスウェーデンの学校の責任を取らなければならない」とし、「教育の地方分権化に反対し再国有化を求める請願書」を提出した。

 この主張を要約すると、以下のようになる。

 「スウェーデンの学校は、欧州で最も短期間で地方分権化したが、今日、これは失敗であったことが明確になっている。改革の結果、スウェーデンの生徒の学力は過去10年間で着実に低下し、その一方、学校間の格差が広がっている」

 さらに同請願書は、学校間の格差が拡大している理由は地域における各自治体の運営能力の差によるものだとしている。特に財政上の格差により教育の質に差が生じ、不平等をもたらしているとし、「全国に同等の学校を保証するのは国家の責任だ」と訴えている。

 教職員が国の管理を望む背景には、学校の運営が安定し、より高く安定した給与が保障されるだろうという腹づもりもあるはずだ。

対応に動く政府だが・・・

 また、教育ラジオ(UR)の調査によると、全国の校長約1000人にインタビューを行ったところ、約半数に当たる48.3%が国家による学校の管理、つまり再国有化を望んでいるという結果が出た。現状のままでよいと回答したのは22%。また同じ調査で、校長の51%が地方政府の行政官によって圧力を受けていると感じていると回答している*1

 2011年の世論調査でも、国民の56%が自治体ではなく国が学校の管理を行ったほうがよいと思うと回答している。

*1http://www.thelocal.se/46428/20130227/