話題騒然の「アベノミクス」における経済政策3本柱のうち、「民間投資を喚起する成長戦略」の中に、「クール・ジャパン」という政策がある。
経済産業省が「クール・ジャパン室」という部局(経済産業省製造産業局クール・ジャパン室)をつくり、文化産業を日本の戦略産業分野として海外に発信、人材を育成してゆく、という発表をしたのは、今回の安倍政権より前、民主党政権下の2010年のことだった。
クール・ジャパンに日本食も登場
この時の経産省ニュースリリースによると、この文化産業という言葉で表される産業は「クリエイティブ産業=デザイン、アニメ、ファッション、映画など」ということで、そこには、「日本料理あるいは日本食」という文字はなかった。
本年3月4日、安倍晋三総理は第1回クール・ジャパン推進会議で、次のように述べている。
「我が国の伝統や文化、あるいは、健康的な日本食は、世界ではブームになっているにもかかわらず、その食材自体は残念ながら日本から出て行っているという状況になってはおらず、そこに戦略の必要性があるのだろうと思うわけでございます」(首相官邸HPより)
どこで誰が何を企てたのか知らないが、ともかくクール・ジャパンに日本食が加わった瞬間であった。この時期から「クール・ジャパン」は日本食もその要素として包含することになったのだ。
本年2月、モスクワでは恒例のPRODEXPO(国際食品展)が開催された。この展示会については、本サイト上で毎年リポートさせていただいている。
日本の企業、団体による展示は2007年をピークにどんどん減り続け、昨年はサントリー1社。今年はついにそのサントリーも不参加となった。
多くの食品企業が日本からロシアへの進出を目指し、この展示会にも時には農水省の支援、時には総合商社の展示ブースを借りて参加するものの、ほとんど何の成果も得られず、次のステップを踏み出すこともなくロシア進出を諦めている。
「ロシアは日本食ブームだ」という情報が日本で喧伝されるようになって久しいが、現実に見るロシアの日本食ブームは、日本人が日本で想像するものとは大きく異なっている。簡単に日本から食材が輸出されたり、あるいは日本人経営のレストランが増えていく、という類のものではない。