法律事務所は、ちょっと敷居が高くて近づき難い・・・。そんな堅苦しいイメージを一掃した簡素なコンテナオフィスで相談に対応する法律事務所がドイツで爆発的な人気を集めている。

 高速道路(アウトバーン)のサービスエリアに開設されたアウトバーン法律事務所だ。

 高速走行中に発生した交通違反や罰金などの対応に困り果てているドライバーがその場ですぐ相談できるため、特にトラックドライバーに支持層を広げている。

ドイツのアウトバーン 

ベルク・アウトバーン法律事務所外観。ドイツの高速道路の総延長は1万2600キロメートル、サービスエリアは60キロごと計370地点にある ©Autobahnkanzlei.de(以下、特記のない画像は著者撮影)

 まずはドイツのアウトバーンについて少し説明を。

 ドイツは欧州の中心に位置し、スイス、フランス、チェコなど9カ国と国境を接する。陸続きの欧州では、高速も隣国と繋がっている。

 物流の動脈として、そして東西交通の要として重要な存在のドイツの高速は、どこでも時速無制限で疾走できると思うかもしれない。しかし、区間により推奨速度がある上、大型トラックは時速80キロメートルの制限が設定されている。

 ドイツの高速道路は小型車なら無料で利用できるため、遠回りになってもドイツを通過する国外利用者も数多い。

 これに対して、大型トラックは有料。その上、トラックドライバーの高速走行時間は1日9時間、4.5時間ごとに45分の休憩を取ること、日曜日や祝日は特例を除いて0時から22時まで走行禁止など、様々な規制が定められている。

 高速走行中に道路工事や思いがけない渋滞にも遭遇する中で、トラックドライバーは配送先への必着時間に追われるがために、スピードオーバーや追い越し禁止に気づかず走行したり、十分な休息時間を取らずに疾走することがよくある。

 これがドイツ高速の日常風景だが、アウトバーン法律事務所は、高速上で長時間過ごすトラックドライバーに重点を置き、予約不要で気軽に立ち寄れる法律事務所を目的に設立した。

5年間で11地点のアウトバーン法律事務所を開設

 バイエルン州・ベルクに国内初のアウトバーン法律事務所を開設したのはペーター・メェーラー氏(54歳)。同氏は、弁護士として30年の実績を持つ道路交通法の専門家だ。