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ビッグデータに関する大いなる誤解

ビッグデータは誰のものか、もう一度考えてみる

2013.02.20(水) 本間 充
    http://goo.gl/AiqDE
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 科学誌natureで、2009年の2月に論文も発表されている。このモデルを作った人は、通常のウイルス流行のモデル、すなわちウイルスの拡散伝播モデルを考えるのではなく、グーグルの検索ワードのデータとインフルエンザ患者のデータを比較することで、この関係性を見つけ出した。

 非常にシンプルに考えることによって関係性を見つけ、その解析の精度を上げていく。このアプローチでは、実は専門的な知識よりも、さまざまなデータから関係性がありそうなものをつなぎ合わせていき、高い関係性のあるものを探し出すという発見的なアプローチが取られている。

 むしろ専門分野の知識がない方が、発見にはよいのかもしれない。そして、このアプローチで重要だった能力は、「統計」「視覚化」「計算」だったのであろう。

 この結果から、さらに高度な「インフルエンザ」の変異と発生のモデルまで考えようとした場合には、もっと「分野の知識」「科学的思考」「数学」が必要になるのであろうが、この段階の説明では十分だろう。

 従って、「分野の知識」は必ずしもすべての段階で必要とされているわけではないというのが、私の理解である。

 最終的な「本質」の理解のためには「分野の知識」は必要になるのであろうが、企業・組織でビッグデータを扱うときには、ある一定のチームが作られるわけで、その意味では、全員がその分野の知識を持っている必要はない。

 むしろ法則がまったく不明なときには、さまざまな視点が必要になり、チームに専門外の人がいる方がよいのではないだろうか?

今、ビッグデータに関する誤解に警鐘を鳴らす理由

 なぜ、この時期に「統計こそすべて」「ある分野を熟知していないと、分析できない」という2つの幻想を取り上げたかというと、ビッグデータについて冷静になってほしいからではなく、もっと多くの人にビッグデータについて考えてほしいからである。

 つまり、ビッグデータは「統計家」だけのものでもなく、「その分野の専門家」のものだけでもないということである。

 むしろ、「こんな関係になっているのでは?」と予測を立てられる人のものであり、「統計家」や「その分野の専門家」は、その仮説に聞く耳を持ち、説明する工夫をした方がよいのではないだろうか。

 ビッグデータという領域が閉鎖的な領域にならないことを願い、私はマーケティング領域を「勘や経験依存」の世界から、「科学的で論理的な」世界に移行するように努めたいと思う。

 最後に、統計の専門家の方にお願いがある。近似式を作るのもいいのであるが、ぜひその近似式を「その分野の専門家」や「科学」「数学」の分野の方と議論をして、本質的な式を作るようにしていただきたい。あまたの近似式を見せられ、式の説明と妥当性の議論もせずに次の議論に進むのは時間の浪費である。

 ビッグデータに必要なのは、チームプレーなのである。

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本間 充 Mitsuru Honma

 

1992年、花王に入社。1996年まで、研究所に勤務。研究所では、UNIXマシーンや、スーパー・コンピューターを使って、数値シミュレーションなどを行う。研究の傍ら、Webサーバーに遭遇し、花王社内での最初のWebサーバーを立ち上げる。1997年から研究所を離れ、本格的にWebを業務として取り組み、1999年にWeb専業の部署を設立した。花王のWebを活用したマーケティングに取り組み続け、現在は、デジタルコミュニケーションセンター 企画室長を務めている。新しいWebのコミュニケーションの検討・提案や、海外花王グループ会社のWeb活用の支援、またB2B領域のサイトの企画まで、広く花王グループのWebのコミュニケーションに関わっている。Ad Tech Tokyo 2009, Ad Tech Singapore 2010等でも講演。

社外においては、公益社団法人・日本アドバタイザーズ協会 Web広告研究会の代表幹事を、2011年から務めている。
北海道大学卒業、数学修士。日本数学会員オープン・モバイル・コンソーシアム メンバー

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