「セクシズム」議論の嵐が、ドイツ中を吹き荒れている。セクシズムというのは、性差別、たいていは女性差別のことだ。

 これが話題になったと思う間もなく、緊急に設置されたツイッターのサイトに、あっという間に9万人のコメントが寄せられた。投稿者はほとんどが女性で、自分が職場でどんな悲惨な目に遭ったかを訴えている。要するに、日本でセクハラと呼ばれているものだ。

政治家の下ネタジョークが炎上、感情的なセクハラ論議に膨れ上がる

 議論はたちまちヒステリックになり、雪だるま式に膨張した。挙句の果て、1月最後の1週間は、有名なテレビのトークショーが3つとも、この問題をテーマにしたのだから、ドイツ人というのはブレーキが壊れている。そのうちの2つを見たが、激しく感情的で、大変面白かった。結論:ドイツ人は無類の議論好き。

 いや、もう少し順を追って話さなくてはいけない。先月、「シュテルン」という有力週刊誌に、「男のジョーク(つまり下ネタジョークのこと)」という題名で、29歳の女性記者の書いた記事が出た。

 FDP(自民党)は、毎年1月6日にシュトゥットガルトで年初めの党大会を開くが、去年の大会前夜、深夜のホテルのバーでの話だ。R・ブリューデレという現在67歳のFDPの政治家(連邦議会の与党代表)がほろ酔い気分で、女性記者に少々品の悪い(?)ジョークを言ったらしい。

 ブリューデレ氏は、頭の回転は素晴らしく良いが、見かけはスマートではなく、どちらかと言えば“親父”っぽい政治家だ。

 国会での質疑応答はエンターテインメントのように面白く、私的な場面では下ネタジョークを連発してもおかしくないと思わせる雰囲気があるが、確かにその通りらしく、この記事には「歩く下ネタジョーク」と書いてある。しかし、私は、隙のない政治家よりも、なんだか人間的に思えて、結構好きだ。

 件(くだん)の記事は、「29歳の女性で政治記者であることは、私にとって常に快適というわけではない。その理由は、R・ブリューデレのような政治家がいるからだ」という書き出しで始まる。

 そのあと、いろいろな場所で彼がどんな下ネタを披露したかが書いてあるが、たいしたことはないどころか、ユーモアがあってかなり笑える。そのうち、この人、誰かに似ていると思ったら、なんと、私の父親だった。あるいは、ドイツの音楽大学で習った教授にも似ている。

 思い返せば、両人とも、私的な場面で口を開けば、真面目な顔をして、なぜかまともなことは一切言わない人たちだった。

 記事の最後は、「午前1時頃、広報の女性がやって来て彼の肩をたたいた。男性に暇を告げるブリューデレ。そして、今度は私の方へ向き、やけに顔を近づけてきた。私は一歩下がり、手で身体をガードする。広報官が、『ブリューデレさん!』とぴしゃりと言って、彼とバーを後にする。『ごめんなさいね』と私に、『さあ、寝る時間です!』と彼に言いながら」と結んである。

 たわいもない話だが、この記事の性質(たち)の悪いところは、そのたわいのない話を材料に、ブリューデレ氏の人となりをバカにし、とても意地悪く書いてあるところだ。