医師不足が深刻化しているドイツで、年明け早々、病院勤務の精神科医による医療ミスが発覚した。ドクター・フランケンシュタインと呼ばれるこの精神科医は、医師派遣サービスを介して活動していたオランダ人のエルンスト・ヤンセン医師(67歳)。

 世間を震撼させたのは、医療ミスを犯した同医師がオランダで重大な誤診を繰り返し、医事紛争の真っ只中にいる事実をドイツ医療関係者が全く把握していなかったことだ。

 欧州連合加盟27国内で自由に移動し就業が可能になったことが災いした今回の事件に、医師も患者も大きなショックを受けている。

誤診、不要な手術、被介護者になった被害者や自殺した患者も・・・

 まず、ドクター・フランケンシュタインことヤンセン医師の過去を辿ってみた。医学専門家ではないので、医療ミスについては詳しく紹介できないが、おおよそは以下の通りだ。

 1998年から2003年、ヤンセン医師は、オランダ東部のオーファーアイセル州エンスヘーデ地区(ドイツのニーダーザクセン州とノルトライン・ウェストファーレン州に隣接する)の病院で勤務医として診察に当たっていた。

 この間、同医師は、患者にアルツハイマーやパーキンソン、多発性硬化症(脳や脊髄、視神経などに病変が起こる神経疾患)という診断ミスや投薬ミスを繰り返していた。

ホームドクター(一般医)の高齢化も医師不足の一因 ©ABDA/ドイツ薬剤師連盟

 不必要な手術を受けたという患者は、分かっただけでも13人もいて、中には12.5センチもの脳組織を摘出されたという患者もいるそうだ。

 アルツハイマーと診断された女性患者は、翌日そのショックで自殺を図ったという悲惨な事例もある。同医師に対する医療過誤訴訟は、200件にも上るとオランダ人弁護士はコメントしている。

 そして2003年、エンスヘーデの勤務病院を解雇された同医師は、隣国ドイツへ移動した。

 2006年、ヤンセン医師は、ノルトライン・ウェストファーレン州のアルンスベルクでオランダの医師免許を提示し、担当者の審査後、ドイツで活動可能な医師免許を取得した。その後、オランダの医師免許は、2009年に同医師自らが母国へ返上したと伝えられている。

 2011年末までの6年間、ドイツ国内5つの病院で派遣勤務した同医師は、ここでもまた診断ミスを犯していた。