傘下の中国工場で若い工員の自殺が相次いでいる台湾・鴻海精密工業は6月2日、すべての工場で賃金を3割引き上げると発表した。これまで2割増の計画を明らかにしていたが、労働者人権擁護団体などから不十分だと非難されていた。
賃上げは自殺と無関係と説明する会社側
米ニューヨーク・タイムズによると、同社はこれまで1カ月900元(131.72米ドル)だった賃金を6月1日付で1200元(175.63米ドル)に引き上げた。ただし同社は「さらなる社内協議の結果決定したもので、一連の自殺とは無関係」と説明している。
問題となっているのは、鴻海精密工業傘下の富士康科技(フォックスコン)の中国・深セン工場。
アップルのタブレット端末「アイパッド(iPad)」やスマートフォン「アイフォーン(iPhone)」などを受託生産している工場で、同社の顧客にはアップルのほか、米デル、米ヒューレット・パッカード(HP)、フィンランドのノキア、ソニーなどがある。
今年に入って10~20代の若い工員の飛び降り自殺が相次いでおり、これまでの死亡者は10人になったと伝えられている。
アップルなどが工場の労働環境などに問題がないか調査しているが、原因はまだはっきりしていない。メディアなどがその過酷な労働条件について報道するなど、同社の労働環境や管理体制に問題があるとの指摘もある。
沿岸部が労働力不足に
鴻海精密工業は「今回の賃上げは労働力不足に対処するための措置」と言っている。
米ウォールストリート・ジャーナルはその背景について次のように報じている。
中国政府は、企業に最低賃金の引き上げを命じている。広東省ではすべての都市で最低賃金を2割以上引き上げるという政策を進めている。これにより内陸部の農村地域と沿岸部の工業地域の貧富の差を解消するというのだ。