日中両国が尖閣諸島(中国名:釣魚島)の領有権を巡り激しく対立する中で、中国政府と国民は日本政府による尖閣諸島の国有化に対して激しく反発し、これまでない大規模な反日デモは中国全土で繰り広げられている。それに対して、日本政府の態度は、尖閣諸島は日本固有の領土であるとして一歩も譲らない姿勢である。

 確かに、領土・領海の領有権問題はどの国にとっても安易に妥協するものではない。しかし、激しく対立するだけでは問題の解決に至らず、双方の国益もさらに損なわれてしまう。とりわけ、日中両国は世界2番目と3番目の経済大国であり、このまま対立し続けると、世界経済に深刻な影響を与える恐れがある。

国有化の狙いは何だったのか

 そもそも尖閣諸島の領有権が日中のどちらに属するものかについては、双方のそれぞれの言い分があるが、1972年、国交回復する当時、周恩来首相(当時)は「大局に立って今は釣魚島の問題を取り上げない」と決めた。その後、鄧小平が実権を握ってから、日本との経済協力を進めるために、「釣魚島問題を棚上げにし、問題の解決を後世に任せよう」と論争を封じ込めた。

 今回の尖閣事件勃発の発端は、東京都が島を個人から購入しようとしたことである。仮に島が東京都の手に入れば、灯台や船溜まりなどが造られ、中国の反発を招くだろうと心配して、野田内閣は尖閣諸島を購入し、国有化した。

 野田佳彦総理および藤村修官房長官によれば、尖閣諸島の国有化こそ島およびその海域の安定と平和を維持する最善策だという。確かに、尖閣諸島を国有化すれば、島の地形を変えず、日本人も中国人も島への上陸を阻止することができる。すなわち、物理的に島の現状を変えないということである。

 しかし、中国が反発を強めているのは、島の地形はもとより国有化による所有権の変更である。無論、尖閣諸島が日本の固有の領土であるという原則論から、個人が所有しても国が所有しても日本の勝手であるが、これ以上、対立が大きくならないように努力するのも双方の責務である。

 野田総理は9月8日にAPECで胡錦濤国家主席と言葉を交わした。そこで尖閣諸島の国有化について不満が示された。双方にとり日中関係は大事な2国関係だとすれば、立ち話ではなく、もう少し時間をかけて話し合いをすべきだったと思われる。しかし、それ以上の話し合いはなく、その2日後に野田内閣は尖閣諸島の国有化を閣議決定した。これで胡錦濤のメンツが丸潰れとなったのである。