中国政府は本当に「幕引き」を始めたのだろうか。81年前に柳条湖事件が起きた9月18日の翌日、北京の日本大使館前では大通りの封鎖が解除された。前日まで見られた大規模な反日デモ隊の姿も見事に消えてしまったようだ。

 もちろん、これで尖閣「国有化」問題が一段落したわけではない。尖閣付近では今も中国の監視船が日本の領海・接続水域への出入りを続けている。日中政府間の「手打ち」は当面ないだろう。そこで今回は日中関係を「正常化」するための処方箋について考えてみたい。(文中敬称略)

「官製」だった? 反日デモ

反日デモは「中国当局が仕組んだ」、美術家の艾氏発言

中国の反体制作家・艾未未氏が撮影した米大使を乗せた車を襲う反日のデモ隊。同氏は反日デモは官製だったと述べた〔AFPBB News

 9月19日朝、北京市公安局は「一連の抗議行動は既に一段落した」「抗議行動のため大使館付近には来るな」とのショートメッセージを北京市民の携帯電話に一斉送信したと報じられた。

 考えてみれば異様な話だ。日本の警視庁は間違っても、こんなことはしない。

 こうした報道は、図らずも、過去1週間の反日デモの多くが中国当局主導であったことを示唆しているように思う。

 しかし、今回の「幕引き」はあくまで大衆動員による対日圧力の終わりに過ぎず、日中両国政府による「手打ち」を意味するものではない。

 日中双方とも大いに不満はあるだろうが、日中関係をこのまま放置するわけにもいかない。

 それでは、今後日中両国政府は一体何をすべきか。関係「正常化」の処方箋を考えるには、まず今回中国側が態度を硬化させた真の理由を知る必要がある。

中国側が「切れた」理由

 既に述べた通り、今回の反日デモが「自然発生」したと信じる者は少ない。だが、今回中国が反日キャンペーンに踏み切った理由については、筆者が尊敬する日本のチャイナ・ウォッチャーたちの間でも、

(1)共産党内の公安系、党宣伝部系要人が胡錦濤総書記一派に対し「政治的揺さぶり」をかけたとする説。

(2)日本の尖閣「国有化」発表がウラジオストクでの日中首脳「立ち話」からわずか2日後だったことで胡錦濤総書記の「面子が丸潰れ」になったからとする説。

(3)次期総書記就任が内定している習近平自身が対日強硬論を主導したためとする説など様々な見方があり、議論は収斂していない。