中国の国内総生産(GDP)はドル建てに換算すると、世界で2番目の規模である。しかし、30年前の中国は世界最貧国の1つだった。わずか、三十余年でここまで経済発展を成し遂げたのはまさに奇跡と言える。

 なぜ中国は奇跡を起こせたのだろうか。その最大の契機は社会主義計画経済から市場経済への方針転換だった。しかし、この約30年の奇跡的な経済発展は、計画経済から市場経済への方針転換だけではすべて説明できない。

 中国にとってラッキーだったのは1990年代初めに冷戦が終結したことである。それをきっかけに外資誘致と輸出促進の「外向型経済モデル」が採られ、経済成長を促した。

 そして、毛沢東時代に進められた出産奨励の反動から、鄧小平が自らの復権とともに人口抑制の「一人っ子政策」を実施したことも大きかった。

 それまで1組の夫婦は平均4~5人の子供を出産していた。しかし一人っ子政策の実施によって1組の夫婦が1人の子供しか生めなくなり、大家族が減少し、3人家族が増えた。結果的に家計の購買力が向上し、有効需要が強化されたのである。

 しかし、一人っ子政策の弊害も大きかった。ここでは、経済発展の代価としての家庭の崩壊にフォーカスすることにする。

核家族化が進み、離婚率が急上昇

 伝統的な中国社会では、家庭は社会の最小単位として社会の安定に寄与していた。中国人は家庭の中で子供を育て、老人の介護も行っていた。だが、そうした家庭はもはや過去のものとなった。これまでの三十余年、中国では家庭が一番大きく変化したと言えるかもしれない。

 変化の1つは、家族人数の減少である。かつて中国社会では3世代や4世代同居は一般的だった。大家族では、老人の介護が家族全員によって行われ、子供の面倒もみんなでみていた。極端に言えば、1つの家族が1つの社会だった。だが、この三十余年、核家族化が急速に進んだ。

 もう1つの変化は、離婚率が大きく上昇していることだ。中国の離婚率は1979年に4%だったが、99年に14%、2003年に15%と急上昇している。北京などの大都市では、離婚率は40%に達していると言われている。

 (中国における離婚率は「1年間の離婚件数÷総人口」ではなく「1年間の離婚件数÷1年間の結婚件数」で算出されるため、高い数字となる。ただし、離婚率が急上昇していることは事実である)