米グーグルによる米アドモブの買収計画を調査していた米連邦取引委員会(FTC)は5月21日、「慎重に検討した結果、市場競争を阻害する恐れはない」とし、買収を承認した。
グーグルは昨年(2009年)11月、携帯電話向け広告ネットワーク企業のアドモブを7億5000万ドルで買収することで同社と合意したが、両社が同分野で首位を争うライバル関係にあることからFTCが調査していた。
アップルの市場参入で懸念薄まる
FTCは発表資料の中で、「ここ最近の業界の動向に鑑みて独禁法問題への懸念は薄まった」と説明。
米アップルがスマートフォン「アイフォーン(iPhone)」やタブレット端末「アイパッド(iPad)」向けのアプリ内広告サービス「アイアド(iAd)」を立ち上げようとしていること、また同社がモバイル広告事業の米クアトロワイヤレスを買収したことから、市場に十分な競争関係が生まれると判断した。
これを受けグーグルは声明を出し、「素晴らしいニュースだ」とコメントした。直ちに買収手続きを完了し、両社の開発チームを統合させるという。
モバイル広告を巡っては、グーグルとアップルによる熾烈なシェア争いが展開されると言われている。両社とも、ネットアクセスの主流はパソコンから携帯端末に移行していくと見ており、この分野への投資を進めている。
アップルのスティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)は、同社がこのアドモブを買収しようとしていたことを認めている。同氏は、英フィナンシャル・タイムズのインタビューに答え、「アドモブを我々に奪われたくなかったグーグルは素早い動きで同社の買収を決めた」と話していた。
アップルは今年1月、業界3位のクアトロワイヤレスを買収してグーグルに対抗したという経緯がある。
アップルの動きがグーグルの主張の手助けに
米ウォールストリート・ジャーナルは、アップルが自社の広告ネットワークでアドモブを締め出したり、自社サービスに有利な施策を展開するのではないかと見られており、そうした懸念が今回のFTCの承認につながったと報じている。
グーグルはかねて、アップルにこそ強力なライバルが必要だと主張していた。皮肉にもここ最近のアップルの動きが、グーグルの主張の説得材料になったようだと、ウォールストリート・ジャーナルは伝えている。