「明日は上海、来週は北京」と中国に頻繁に通いつめる日本人ビジネスパーソンは、もはや珍しくなくなった。海外ビジネスを展開するにあたって、いまどき中国語が話せないようでは仕事にならない。

 「HSK漢語水平考試」ホームページによれば、日本人の中国語学習者は2009年時点で200万人を突破した。世界では約4000万人が中国語を学習していると言われ、世はまさに中国語ブームの真っ只中だと言える。

 しかし、日本の教育の現場で異変が起きている。ここに来て、中国語の人気が大きく低下しているのだ。

 2009年時点で、英語以外の外国語を授業として導入する全国の高校はおよそ2000校あり、対象言語は16言語。そのうち中国語の授業を開設する高校は最多の831校に達している

 だが、首都圏のA高校では今年度に入り、中国語を専門で学ぼうという学生が劇的に減ったという。関係者は「過去10年にない減少ぶりだ」と驚く。また、中国語学習にかけてはどこよりも熱心と言われているB高校の中国語講師も、「中国語を選択する生徒は減った」と漏らす。

 大学の「第二外国語」はどうか。私立C大学で非常勤講師を務めるD教授に尋ねると、ここでもやはり「減っている」と言う。「従来は週末に2コマを教えていましたが、それが1コマに減りました。私だけでなく、他の非常勤の先生方も同じように授業が減っています」(D教授)

 首都圏の私大で中国語の専門学科が置かれているところは少なくないが、大学によっては近年受験者数が減っているとも言われている。

漁船への体当たりに「許せない」

 日本で中国語を選択する学生が減った理由は何か。思い当たる節はある。

 中国はもはや「世界の工場」としての役割を終えたという指摘がある。産業界における中国からの引き揚げムードが、学生の心理を他のアジア諸国にシフトさせているのかもしれない