カザフスタン、キルギス(タン)、タジキスタン、アフガニスタン、パキスタン。この5カ国の共通点をご存じだろうか。どれも末尾に「スタン」が付くユーラシア大陸中央のイスラム系国家?

 確かにそうだが、ここにウズベキスタンとトルクメニスタンは入っていない。

 正解は「中国西方で中国と直接国境を接するイスラム系国家」だ。地図を見れば、北のロシアと南のインドに挟まれた西の国境で、中国とイスラム圏とがしっかりつながっていることに改めて驚かされる。今回はあまり知られていない中国の西方戦略を取り上げたい。

上海協力機構の「変容」

中国は西でイスラム系国家と接している

 東京で日中、米中スパイ事件や中国経済の鈍化が大きく報じられた先週、北京では第12回上海協力機構(以下SCO)首脳会議が開かれた。

 日本のマスコミも、中露が米国、北大西洋条約機構(NATO)への対抗姿勢を鮮明にしたなどと報じていたので、覚えている方は多いだろう。

 あるロシア専門家によれば、そもそもSCOで中露は「一枚岩」などではなく、両国間の新たな「競争」と「不信」は既に始まっているそうだが、この見方は基本的に正しい。今やSCOは中央アジアを巡る中露間の新たな「主導権争い」の主戦場になりつつある。

 SCOは1996年4月の「上海ファイブ」首脳会議から発展した地域国際協力機構だ。正式発足は2001年6月、加盟国は中露とカザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタンの6カ国だが、その後多くのオブザーバー国、対話パートナー国が加わっている。

 中露両国の思惑はSCO設立当初から大きく異なっていた。ロシアは、主として安全保障上の観点から政治的側面を重視し、中央アジアに対する中国の影響力を牽制しつつ、SCOをNATOに対抗できる軍事同盟に育てるつもりだったようだ。

 これに対し、政治軍事よりも経済的利益の拡大を重視する中国は、SCOを通じて中央アジアとの経済関係強化を狙っているという。中国から見れば、ロシアが考えるような「NATOに対抗するSCO」など真っ平御免、実に危険極まりない話、ということだろう。