週刊NY生活 2012年5月26日397号

 ブルックリン在住のアーティスト、宮川剛さん(50)が5月19日、「I(注:塗りつぶしのハートマーク)NY」のロゴが書かれた買物用のプラスチックバッグ(ビニール製バッグ)を使ったパブリックインスタレーションを設置しようとしたところ、木に不審な物がぶら下げられたとの住民の通報を受け駆けつけた警察に逮捕された。

 23日午後2時30分からブルックリンのキングス・カウンティ最高裁判所で審議があり、宮川さんは保釈金なしで午後4時過ぎに保釈された。今後は6月21日に精神鑑定が実施される予定。

 保釈された宮川さんは、幾分青ざめた表情でビルから出ると報道陣に囲まれ「もうこういうようなことはしない。このようなことは予期していなかったので最初逮捕された時はこれで自分のキャリアはおしまいかと思うくらい落ち込んだ。理由は日本も米国も最近はいいニュースが少なく、そういう時になにかポジティブなメッセージとして、アイ・ラブ・ニューヨークはシンプルで非常に力強いものだと思った。刑務所のなかでは非常に孤独だったので、保釈するような動きをしていただいた皆さんに本当に心を励まされた。いまでもニューヨークは好き」と話した。

 今後の自身の予定については未定だという。

 宮川さんはさる19日、同様のビニールバックを街のいたるところに飾ろうとしたという。宮川さんの友人で、「師匠にあたり第二の父親」と語るルイス・リムさんは「デザインフェスティバルに合わせたポジティブメッセージ。宮川さんは決して人を怖がらせようとしたわけではない」と語っている。

保釈後、裁判所前で会見する宮川さん(23日午後4時半すぎ、写真・山越晃記者)

 19日午前2時過ぎ、通報を受けた警察は、ブルックリンのウイリアムズバーグのマクカーレン公園の近くで、はしごに登りプラスチックのショッピングバッグを街灯に取り付けようとした宮川さんを発見、逮捕した。

 バッグの中にはプラスチックの箱とLEDライト、ワイヤー、バッテリーなどが入っていた。警察の爆発物処理班による捜査が行われ、付近は2時間にわたり退避命令が出された。その後、警察は爆発物ではなかったと報告している。ほかの場所でも同様のバッグが数個発見された。

 翌20日朝、ブルックリンの裁判所で罪状認否が行われた。訴状によれば容疑は、無防備に危険にさらしたこと、偽の爆弾もしくは危険物を置いたことなどとなっている。

 裁判所は宮川さんに30日間におよぶ精神鑑定を受けさせることを決定。宮川さんの弁護士、デボラ・ブラム氏は「(逮捕は)はなはだしい誤解によるもの」と述べている。

 宮川さんは日本で生まれ1989年からニューヨーク在住。ブルックリンのグリーンポイントにデザイン事務所を構え、家具などのデザインで知られる。

 有名なラファエル・ビニオリの建築事務所でも働いた経験があり、事件の報道を受けビニオリ氏は「彼は非凡な才能を持った素晴らしい人間だ」と述べている。

 アート作品がもとで逮捕されたケースは過去にもあり、2006年にプラットインスティテュートの学生2人が、カーボンチューブとバックなどを新聞紙でくるめたものを地下鉄に置き忘れ、逮捕されている。

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